24〜25年半導体市況を見通す ―― WSTS春季予測はもっと強気でもよいのでは:大山聡の業界スコープ(77)(2/3 ページ)
WSTS(世界半導体市場統計)が2024年および2025年の世界半導体市場予測を発表した。2024年の成長率は前年比16.0%と予測されているが、条件次第ではもっと強気な予想も可能ではないか。今回は、これまでの状況を踏まえながら今後の市況見通しについて考える。
アナログ市場はまだ低迷、マイクロ/ロジック市場は増加へ
ICは「アナログ」「マイクロ」「ロジック」「メモリ」に類別される。
アナログ市場は同2.7%減という予測。2024年1月から4月までの実績を見ると同5.4%減、低迷しながらもボトム期は脱したようなので、順当な予測と言えるだろう。汎用アナログ市場における過剰発注の影響が残って同20%以上のマイナスが続いている。2024年後半に過剰発注影響が収束できるかどうかがポイントだろう。特定用途向けでは、携帯端末向け需要が回復しているので、アナログ市場全体を押し上げる要因にもなっている。2025年は同6.7%増という予測だが、スマホ向け需要がこのまま堅調に推移してくれれば、十分達成可能だろう。ただし、5G(第5世代移動通信)サービスが立ち上がらないと、またどこかで需要が失速する懸念がある。
マイクロ市場は同1.6%増という予測。2024年1月から4月までの実績を見ると同10.6%増、堅調に推移しており、WSTSの予測はかなり保守的に見える。特にマイクロ市場の約6割を占めるMPUが4月まで同34.5%増と好調に推移しており、PC向け需要が回復基調にあることを裏付けている。ただしMCUは4月まで同17.7%減と低迷しており、車載向けを中心に失速している点が気がかりである。MPUも今は好調だが、PCの在庫が減少したことによるもので、PC市場そのものが好調というわけではないので、予断は禁物だろう。2025年は同5.2%増という予測だが、MPUの好調さがいつまで続くのか、失速したMCUの需要がいつ回復できるのか、がポイントである。サーバ向けのMPU需要の増加にも期待したいところだが、Intel、AMDはMPU、NVIDIAはロジックでサーバ向けのソリューションを展開している点にも留意したい。あくまでもデバイスの定義の問題だが、NVIDIAがサーバ向けのシェアを伸ばし続けると、MPU市場そのものが縮小する可能性がある。
ロジック市場は同10.7%増という予測。2024年1月から4月までの実績を見ると同14.2%増、堅調に推移しており、WSTSの予測を上回る可能性が高い。ロジックの中でも高い比率を占める通信機器向けロジックは、4月までの実績が同19.0%増と極めて好調である。スマホ1台に1個搭載されるアプリケーションプロセッサ市場が同8.4%増、まずまずのレベルで推移しているが、今後は5Gサービスが立ち上がるかどうかがポイントだろう。2025年は同10.4%増と予測しているが、やはり5Gサービスの立ち上がりに大きく影響を受けそうである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.