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ECTCのプレナリーセッションで新材料のスタートアップ3社を紹介福田昭のデバイス通信(464) ECTC現地レポート(2)(3/4 ページ)

引き続き、「ECTC 2024」の現地レポートをお届けする。2024年5月30日のプレナリーセッションでは、半導体パッケージングのスタートアップ企業3社が講演を行った。今回は、この3社のプレゼン内容を紹介する。

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感光性ポリカーボネートと熱膨張率を制御可能な複合材料

 次に、TerecircuitsのCEOを務めるWayne Rickard氏が講演した。同社は半導体分野向けとディスプレイ分野向けの材料メーカーである。講演タイトルはなく、講演スライドのトップページは企業名と講演者名、連絡先だった。

TerecircuitsのWayne Rickard氏によるショート講演のスライド
TerecircuitsのWayne Rickard氏によるショート講演のスライド(トップページ)。5月30日午前(現地時間)に筆者が撮影したもの[クリックで拡大]

 講演では主に、2つの製品を説明した。1つは「Terefilm」と呼ぶ、感光性のポリカーボネートフィルムである。既に販売中だ。用途としては例えば、パワー半導体ダイの搬送用フィルムを挙げていた。従来の搬送用フィルムによるピックアップでは、フィルムの下から針でダイを突き上げることで、ピックアップを容易にしていた。

 しかしこの方法では、針の突き上げによってダイを傷つける、隣接するダイ同士が接触する、といった問題があるという。特に化合物半導体のシリコンカーバイド(SiC)はシリコン(Si)よりも硬く、傷つきやすい。

 そこで「Terefilm」に粘着性を持たせてパワー半導体ダイをフィルムの下面に仮接着し、搬送に使う。目的の半導体ダイが所定の位置に到達したところでレーザーを上からフィルム(ダイの位置)にスポットで照射すると、フィルムが粘着力を失って半導体ダイが落下する。落下した半導体ダイを受け止めて次の工程に移行する。半導体ダイは機械的なストレスをまったく受けない。

主要な製品の事例
主要な製品の事例。上は「Terefilm」と呼ぶ、感光性のポリカーボネート。下は「Terefill」と呼ぶ、タングステン酸ジルコニウム(ZrW2O8)のナノ粒子を分散させた複合材料。Wayne Rickard氏によるショート講演のスライドを筆者が撮影したもの[クリックで拡大]
感光性カーボネート「Terefilm」の応用事例(想定図)
感光性カーボネート「Terefilm」の応用事例(想定図)。半導体ダイのピックアップ用搬送フィルムの例。左は従来のフィルムによる搬送。フィルム上面に載せたダイを下から針で突き上げることで、ピックアップしやすくする。ただし針の突き上げによってダイが傷つく懸念がある。右は「Terefilm」による搬送。フィルム下面にダイを仮接着しておく。上からレーザーをスポット照射するとフィルムが粘着力を失い、ダイが落下する。Wayne Rickard氏によるショート講演のスライドを筆者が撮影したもの[クリックで拡大]

 もう1つは「Terefill」と呼ぶ、タングステン酸ジルコニウム(ZrW2O8)のナノ粒子を分散させた複合材料である。2024年中にサンプル出荷を始める予定だ。タングステン酸ジルコニウムは、温度が上昇すると体積が減少するという珍しい性質を備える。熱膨張率がマイナスになるので「負の熱膨張率」とも呼ぶ。通常の材料(母材)は温度が上昇すると体積が増加する。母材にタングステン酸ジルコニウムのナノ粒子を分散させて比率を調整することで、熱膨張率を制御できるようになる。

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