AI普及の思わぬ弊害 データセンターの電力問題が深刻化:半導体やシステムの改善が不可欠(1/2 ページ)
AI(人工知能)の発展が進む上で、データセンターの電力消費量に対する懸念が増している。次世代パワー半導体の積極的な採用や、より効率の良いデータセンターアーキテクチャの採用をはじめ、早急な対策が必要になる。
米国EE Timesの取材に応じた専門家によると、世界のデータセンターの電力消費量は今後数年間で倍増し、電力会社の供給能力を圧迫すると予想されるという。データセンターの効率を改善しなければ、こうした電力の逼迫(ひっぱく)によって、AI(人工知能)の発展が妨げられる可能性がある。
パリに本部を置く国際エネルギー機関(IEA)は2024年1月の報告書で、「データセンターやAI、暗号通貨マイニングによる電力需要が2026年までに急増する」と述べている。IEAによると、世界のデータセンターの総エネルギー消費量は、2022年はおよそ460テラワット時(TWh)であったが、2026年にはその2倍以上となる1000TWhに達する可能性があるという。これは、日本の電力消費量とほぼ同等である。同報告書では、「需要の急増を抑えるには、規制の改訂と効率化などの技術改善が不可欠である」と述べている。
米イリノイ大学アーバナシャンペーン校(University of Illinois, Urbana-Champaign)の電気工学教授であるPhilip Krein氏によると、現在米国で建設が進められているデータセンターのような大規模データセンターの電力需要は、人口100万人の都市とほぼ同等だという。
Krein氏はEE Timesに対して、「1、2年前であれば、一般的なデータセンターは10MW(メガワット)か20MW、ないしは30MW規模だと答えていただろう。これは、工業団地くらいの規模だ」と語った。「だが、業界クライアントから500MWのデータセンターの設計を依頼された設計者の話を聞いたこともある。これは工業団地ではなく、大都市だ。本当に懸念されるのは、これらのデータセンターの一部が、任意に電力を増減できるようにしたいと考えていることだ。500MWの発電所を稼働して、0〜100%の間で増減させることはできない。500MWになると、これまでとは大きく異なる規模の課題が生じる」(同氏)
IEAによると、世界の8000を超えるデータセンターのうち、約33%が米国、16%が欧州、10%が中国にあるという。米国の電力消費量は、2022年は米国の電力需要の約4%に当たる約200TWhだったが、2026年には同6%に相当する約260TWhに増加すると予想される。5G(第5世代移動通信)ネットワークとクラウドベースのサービスの導入が増えることで、電力需要が増加すると考えられる。
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