モアレ励起子の量子コヒーレンス時間を直接測定:モアレ励起子が量子ビットに
京都大学と物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは、2次元半導体を重ねてできるモアレ縞に閉じ込められたモアレ励起子から発光信号を検出し、その量子コヒーレンス時間を測定することに成功した。
電子線微細加工や反応性イオンエッチングなどを組み合わせ
京都大学エネルギー科学研究科のHaonan Wang博士課程学生、エネルギー理工学研究所の篠北啓介助教、松田一成教授、物質・材料研究機構(NIMS)の渡邊賢司特命研究員、谷口尚理事らによる研究グループは2024年7月、2次元半導体を重ねてできるモアレ縞に閉じ込められたモアレ励起子から発光信号を検出し、その量子コヒーレンス時間を測定することに成功したと発表した。
量子コンピュータなどの量子技術では量子ビットが用いられる。この時に重要となるのが量子コヒーレンス時間である。2次元半導体と呼ばれる次世代ナノ半導体では、モアレ励起子を量子ビットとして機能させることが期待されている。ところが、現行の計測手法では、数多いモアレ励起子からの信号を観測できず、これまではモアレ励起子の量子コヒーレンス時間などを計測することができなかったという。
研究グループは今回、「電子線微細加工技術」と「反応性イオンエッチング」を組み合わせることで、観測するモアレ励起子の数を制限する新しい手法を開発した。これにより、モアレ励起子1個からの発光信号を検出することが可能となった。
さらに、マイケルソン干渉計を用い、モアレ励起子1個の量子コヒーレンス時間を直接測定した。この結果、モアレ励起子1個の量子コヒーレンスは、−269℃の低温で12ピコ秒以上維持されていることが判明した。この量子コヒーレンス時間は、2次元半導体の励起子に比べ10倍以上も長く、励起子がモアレポテンシャルに閉じ込められることで、コヒーレンスが失われにくいことが分かった。
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