ディスプレイを「分身」させる技術を開発、JDI:量産開始は2025年を予定(1/3 ページ)
ジャパンディスプレイは2024年8月2日、見る角度によって異なる2つの映像を表示することができる2 Vision Displayにおいて、HD相当の画質を実現した新製品を発表した。同製品には、タッチ操作した人を識別する「Double Touch」機能も搭載している。
ジャパンディスプレイ(以下、JDI)は2024年8月2日、見る角度によって異なる2つの映像を表示できる技術「2 Vision Display(2VD)」において、HD相当の高画質を実現した車載向けの新製品「Dual Touch 2VD」を発表した。液晶の前面に特殊なブラインドを設置することで、2つの異なる映像を流した際に、見る角度によって異なる映像を見ることができる。2DVに加え、タッチ操作が運転席側/助手席側のどちらから行われたものなのかを識別する機能「Dual Touch」を搭載したもの。これにより、1枚のディスプレイを2枚のタッチディスプレイに“分身させて”使用することができる。量産開始は2025年を予定する。
Dual Touch 2VDは、JDIが「世界で初めて」(同社)開発した技術だ。自動車前方のCID(Center Information Display)を同製品に置き換えることで、ディスプレイの数を増やさずに運転席向けと助手席向けに別々の映像を表示できるようになる。
現在、運転者のわき見運転を防止するため、運転中にCIDでドラマや映画などのコンテンツを表示することはできない。そのため、一部の高級車では、CIDに加えて、助手席前方にPID(Passenger Information Display)を搭載し、CIDとは別のコンテンツを表示することでユーザー体験の向上を図っている。
しかし、昨今はシンプルな車内デザインを求める傾向がある他、助手席前方にはエアバックを搭載する必要があるため、設置できるPIDの大きさには限界がある。また、PIDでは、コンテンツが運転者の視界に入ることを防ぐべく、運転席側からPIDを見た場合に黒く見えるような加工を施すことが義務付けられていて、この加工には相応のコストがかかるという課題があった。
2VDは、PIDを設置せずにユーザー体験を向上させられる方法の一つだ。しかし、従来の2VDでは、1つの映像に対して使用できる液晶が半減してしまうことや、異なる2つの映像信号が映像処理の過程で混ざり合ってしまうことにより、画質(解像度)や輝度が低下し、車載用ディスプレイの要件を満たさないという課題があった。タッチ操作への対応も難しかった。
JDIが発表したDual Touch 2VDは、同社のLTPS(低温ポリシリコン)と液晶パネル光学技術を活用し、独自開発の画像処理エンジンを用いることで、解像度/輝度を従来の2VDの約2倍に当たる171ppi/700nitsに、コントラストを従来の約3倍に当たる1000:1に向上した。また、新開発のアルゴリズムにより、運転席/助手席のどちらの人が触れたのかを判別できるため、安全性を担保しながら、1枚のディスプレイで複数のコンテンツを同時に操作することが可能になった。
JDIで執行役員 Auto Tech事業部 事業本部長を務める福永誠一氏は、「自動車は単なる移動手段から、移動しながら快適に過ごす場所になっている。また、ディスプレイは、単なる情報表示の役割だけでなく、エンターテインメントの役割としても重要性が増している」と述べ、「Dual Touch 2VDの提供を通じて、自動車の安全性とエンタメ性を両立するスマートデザインを実現する」と語った。
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