液相合成法で「単層カーボンナノチューブ」作製:安価な装置で大量合成が可能に
名城大学は、液相合成法により「単層カーボンナノチューブ」を作製することに成功した。従来の化学気相成長法(CVD 法)に比べ、安価な装置で大量に合成することが可能となる。
Ir触媒を用いて、直径1nm以下の単層CNTを生成
名城大学理工学部応用化学科の丸山隆浩教授らによる研究グループは2024年8月、液相合成法により「単層カーボンナノチューブ」を作製することに成功したと発表した。従来の化学気相成長法(CVD法)に比べ、安価な装置で大量に合成することが可能となる。
カーボンナノチューブ(CNT)の作製方法としては、炭素を含む原料ガスを触媒金属と高温で反応させるCVD法が主流である。特に、粒径が数ナノメートルの金属粒子を用いると、単層CNTを作ることができ、大量生産にも適している。ただ、高額な装置を用いる必要があった。
これに対し、有機溶媒中で金属触媒を加熱することでCNTが得られる「液相合成法」も登場した。この方法だとCNTの合成を安価な装置だけで行うことができる。しかし、その多くは多層CNTであり、単層CNTを合成するのは難しかったという。
そこで研究グループは、粒径が数ナノメートルのCo(コバルト)および、Ir(イリジウム)ナノ粒子を用い、液相合成法による単層CNTの作製に取り組んだ。実験では、これらの触媒粒子をSiO2/Si基板に堆積し、基板を通電加熱することで常温の液体エタノール中で触媒周辺のみを高温に保った。なお、反応中にエタノールが蒸発しないように還流冷却器を取り付け、エタノールの入った容器全体も氷水で冷やした。
Co触媒の堆積量を調整していくと、加熱温度700℃において繊維状の単層CNTが絡まった状態で基板上に生成された。単層CNTの結晶性は良好で、気相合成に匹敵するレベルもあったという。Ir触媒の場合は、生成量がCo触媒より少ないものの、直径1nm以下の単層CNTを得ることができた。
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