苦悩するSamsung ファウンドリーやメモリで厳しい立ち位置に:米新工場の立ち上げが遅延(2/2 ページ)
Samsung Electronicsは、米国テキサス州テイラーの新工場の立ち上げを遅らせるという。同社は、ファウンドリー事業ではTSMCに、メモリ事業ではSK hynixに後れを取っている。業界関係者の分析によれば、Samsungの意思決定の重点は、日和見主義から慎重姿勢へと変わっているという。
「Samsungは、慎重になっている」
TechInsightsのバイスチェアマンを務めるDan Hutcheson氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「Samsungはシステムに衝撃を受け、より慎重になっている」と述べる。
「Samsungの意思決定の重点が、日和見主義から慎重姿勢へと変化している。これに関しては数々の証拠があり、例えば経営陣を入れ替えたことなどが挙げられる」(Hutcheson氏)
同社は2024年5月21日、「半導体危機」と呼ぶ状況の中で半導体事業部門のトップを交代させた。同社のファウンドリー事業は、ライバルであるTSMCに打ち負かされ、一方でメモリ事業は、SK hynixに大きく後れを取っている。
Samsungは2022年、業界初となる3nmノードの製造を開始し、半導体技術におけるリーダーシップを確立したと主張したが、2023年にはこの新しいプロセスの顧客を見つけるのに苦戦している。3nmノードへの移行に関しては、一部の業界専門家たちが「リスクが高すぎる」との見方で一致していた。一方でSamsungのメモリ事業は、AIの拡大に不可欠なHBM(広帯域メモリ)の供給競争において、ライバルであるSK hynixに後れを取っている。
Hutcheson氏によると、Samsungが事業を回復させ、新たなファブ生産能力を構築するには、さらに時間を要する可能性があるという。
「Samsungの意思決定システムについて分析したところ、慎重姿勢への移行が明らかになったのは、2022年半ばにメモリの過剰供給が悪化し、それが2023年に深刻化したことが引き金になっているようだ。同社に関するもう1つの懸念としては、2023年の工場稼働率が70%台前半にとどまり、TechInsightsの予測では、拡大を推進していくために必要なピークに達するのがこの先10年間の後半以降になる見込みであるという点だ。工場の生産能力について日和見主義的な意思決定を行うことは、愚か者のゲームになりかねない」(Hutcheson氏)
Samsung Foundryの責任者であるTaejoong Song氏は、2024年4月30日に行った業績発表の場で、「2024年第1四半期は、主要顧客の在庫調整が続く中、市場の需要低迷によって売上高の回復が遅れた」と述べている。
「それでも、工場を効率的に稼働させることにより、わずかながら損失を抑えることができた」(Son氏)
また同氏は、「ファウンドリー市場は2024年後半に、限定的な成長を遂げる見込みだ。それでもわれわれは、最先端技術の売上高増加により、市場全体を上回る成長を遂げられるとみている」と述べる。
さらに、「われわれは現在、3nm/2nmのような最先端技術の開発を順調に進めており、特に4nm技術の歩留まりが安定している。また、ティア1顧客向けの生産量も増加している」と付け加えた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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