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Intelはどこで間違えた? 〜2つのミスジャッジと不調の根本原因湯之上隆のナノフォーカス(75)(1/5 ページ)

Intelの業績が低迷している。業績以外でも、人員削減や「Raptor Lake」のクラッシュ問題など、さまざまな問題が露呈していて、Intelが厳しい状況に追い込まれていることが分かる。Intelはなぜ、このような状況に陥っているのか。そこには2つのミスジャッジと、そもそも根本的な原因があると筆者はみている。

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“一人負け”のIntel


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 Intelの業績が冴えない。2024年8月1日に発表された2024年第2四半期(Q2)の決算は、売上高が128.2億米ドルで、営業損失が19.8億米ドル、最終損益が16.1億米ドルといずれも赤字を計上した。加えて、従業員15000人を削減し、配当を停止することも発表された。

 Intelの不調は今に始まったことではない。2019年以降の四半期の売上高と営業利益を見てみると、コロナ特需によって2021年に営業利益が増大したが、2022年に入って特需が終焉すると、売上高も営業利益も急降下した。特に営業利益は、2022年Q2以降、ほとんど赤字で推移するようになった(図1)。

図1 Intelの四半期の売上高と営業利益
図1 Intelの四半期の売上高と営業利益[クリックで拡大] 出所:Intelの決算報告のデータを基に筆者作成

 その後、2022年11月30日に、Open AIがChatGPTを公開すると、米NVIDIA、米AMD、SK hynixなどが売上高を大きく伸ばす一方、Intelの売上高は横ばいで、営業利益はまたしても赤字に陥った。要するに、世界の多くの半導体メーカーが生成AIブームに乗って業績を向上させているにもかかわらず、Intelだけが「一人負け」の状態となっている。

 なぜ、Intelがこれほど不調なのか? その原因はどこにあるのか?

 本稿ではその根本原因を分析する。結論を先に述べると、Intel不調の原因には、第5代目CEOの故Paul Otellini氏と第7代目CEOのBob Swan氏による2つのミスジャッジがある。そして、2005年から2009年にかけて、約10万人の社員のうち約2万人をリストラしたことが、その後の微細化の不調を招いた根本原因であることを論じる。

 その上で、2021年の13万人超から、2年間で約3万人をリストラしようとしているIntelの未来は非常に厳しい事態になるであろう私見を述べる(図2)。

図2 Intelの歴代CEO、Node(nm)、半導体売上高、社員数、ミスジャッジと不調の根本原因
図2 Intelの歴代CEO、Node(nm)、半導体売上高、社員数、ミスジャッジと不調の根本原因[クリックで拡大] 出所:Intelのアニュアルレポートを基に筆者作成

第1のミスジャッジ

 Intelの最初のミスジャッジは、今から約20年前の2005年頃にさかのぼる。第5代目CEOの故Paul Otellini氏は、米Appleの故Steve Jobs氏から、「iPhone」用プロセッサの生産委託の打診を受けた。

 2005年当時、世界に携帯電話は普及していたが、スマートフォンというものは存在しなかったし、どのくらいの市場規模になるかも分からなかった。そのような中で、Otellini CEOは、Appleからの生産委託を引き受けるか否かの決断をしなければならなかった。

 結果的に、Otellini CEOはAppleからの生産委託を断ってしまった。そして、AppleのiPhone用のプロセッサは、Samsungが受託した。しかしその後、AppleとSamsungがスマホを巡って、泥沼の特許訴訟に突入していったため、2014年以降はTSMCがiPhone用のプロセッサを生産するようになった。そして、TSMCにとって、Appleは、売上高の25%以上を占める最大の顧客となった。

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