Intelはどこで間違えた? 〜2つのミスジャッジと不調の根本原因:湯之上隆のナノフォーカス(75)(4/5 ページ)
Intelの業績が低迷している。業績以外でも、人員削減や「Raptor Lake」のクラッシュ問題など、さまざまな問題が露呈していて、Intelが厳しい状況に追い込まれていることが分かる。Intelはなぜ、このような状況に陥っているのか。そこには2つのミスジャッジと、そもそも根本的な原因があると筆者はみている。
2万人のリストラが次世代の微細化を狂わせた
最先端の微細化を進めている半導体メーカーは、現在ある世代のNodeを量産しながら、次世代のNode、次々世代のNode、その先の世代のNode、というように、3〜4世代先のNodeの半導体を同時開発している。
例えば、Otellini CEOの時代に、65nm、45nm、32nm、22nmのプロセッサの量産を行いながら、次世代14nmの開発、次々世代10nmの開発を並行して行っていたはずである。
しかし、2005年から2009年にかけて2万人も社員を減らしてしまった。このとき、どこの部門の社員を減らしたかを考えてみると、そのとき製造しているNodeに関わっている技術者は減らせない。また、そのNodeの営業やマーケティング要員も減らせない。
最も人員を減らしやすいのは、次世代や次々世代の開発に関わっているR&D技術者である。というのは、その技術者を減らしても、現在進行中の製造や販売に影響が出ないからだ。
しかし、先物のR&D技術者を減らしたツケは、その将来に払うことになる。14nmの立ち上げが1年遅れ、10nmの立ち上げが5年以上遅延したのは、2万人の社員(の中のR&D技術者の多く)を減らした影響であると考えられる。
そして、いったん狂ってしまった微細化の時計の針は2度と元には戻らない。
4年で「5 Node」の微細化を進める?
Intelは、2020年Q2の決算発表で、Bob Swan CEOが、次世代の7nmが1年以上遅延していることを認めた上で、「「Intelは2022年までに、次世代プロセス技術の社内開発を継続していくのか、またはファウンドリーの活用を拡大していくのかどうかについて、決断を下す予定だ」と語ったという(関連記事:「「Intel Outside」、アウトソースの道を選ぶのか?」)。
上記、当時のBob Swan CEOの発言からは、「Intelはファブレスになるかもしれない」という意図が透けて見える。しかし、2021年に第8代目のCEOに就任したPat Gelsinger氏は、このような考えを一掃し、『「IDM2.0」と名付けた戦略により、IDM(Integrated Device Manufacturer)を維持・拡大するとともに、Foundry事業を開始する』ことを宣言した。
そして、Pat Gelsinger CEOは、プロセスNodeをnm(ナノメートル)から、「Intel 7/Intel4/Intel3/20A/18A」という独自の名称に変更し、微細化で先行するTSMCに追い付くために、4年で5 Nodeの微細化を進めるという超積極的な計画を打ち出した(「Intel Innovation 2023」の基調講演、2023年9月19日)。
その計画によれば、2022年から2025年までの4年間で、intel 7、intel 4、intel 3、20A、18Aの5 Nodeを進めることになる(図6)。もし本当に、「4年で5 Nodeを推進」するとしたら、半導体の微細化の常識からすれば、かなり、むちゃくちゃな計画である。
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