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RISC-Vに傾倒する欧州 「戦略的に必須」「保守的な投資」が障壁に(1/2 ページ)

欧州の半導体業界は、RISC-Vへの注力をますます強めている。ただし、欧州での半導体投資が米国ほどダイナックではないことに懸念を示す業界関係者も存在する。さらに、ドイツなど国によっては技術を製品化する際にも幾つかの制約があるという。

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 欧州の技術分野は現在、オープンソースの命令セットアーキテクチャであるRISC-Vの利用拡大に伴い、注目すべき進化を遂げている。

 ドイツ ミュンヘンで2024年6月24〜28日に開催された「RISC-V Summit Europe」では、主要な専門家や業界の代表者たちが、「欧州は、資金提供メカニズムや研究機関、業界パートナーシップなどが複雑に絡み合った状況の中で、RISC-Vエコシステムにおける重要なプレイヤーとしてどのように自らを位置付けていくのか」という点について議論を行った。このような進展は、技術の進歩を意味し、半導体技術における自律性を強化していくための戦略的移行を示唆している。

 米国EE Timesは今回のカンファレンスにおいて、ミュンヘン専門大学(Munich University of Applied Sciences)の教授であり、FOSSi FoundationおよびRISC-VのボードメンバーであるStefan Wallentowitz氏と、バルセロナスーパーコンピューティングセンター(BSC:Barcelona Supercomputing Center)の主席リサーチエンジニアであるTeresa Cervero氏に話を聞いた。

イノベーションのための欧州の資金提供を活用

 欧州のプロジェクト/補助金は、RISC-Vを前進させていく上で非常に重要な役割を担う。欧州のさまざまな資金提供機関が研究機関や大学に膨大な資金を投じ、イノベーションのための豊かな基盤を構築している。

 RISC-V分野の著名人であるWallentowitz氏は、EE Timesの取材に応じ、「大学は、RISC-Vの多くの初期研究をけん引してきたが、この研究を商用製品へと移行させていく上での最終的な責任は、産業界にある。結局のところは、企業の責任だ。われわれは、研究成果を産業界に移行することについては賛成だが、それを実現するのはわれわれの任務ではない」と述べている。

Stefan Wallentowitz氏
Stefan Wallentowitz氏 出所:RISC-V International

 資金提供の構造は、産官連携を奨励するよう設計されている。大学は通常、研究予算全体の70%を負担し、残りの30%を業界パートナーが提供することになっている。このようなモデルにより、産業界の関係者が研究成果を確実に享受し、技術移転に貢献する環境を構築することが可能だ。

商業化には課題も

 資金の流入が見込まれるとはいえ、学術研究を商用製品へと変換させていく上での課題が残る。Wallentowitz氏は、「例えばドイツの大学では、商業化前の技術成果物を製造することが制限されている。研究プロジェクトでは、最大でも技術成熟度レベル(TRL:Technology Readiness Level)の評価基準が4または5までの成果物しか製造することができない。このような制限があるため、研究段階を超えて技術を推進していくには、産業界の関与が必要だ」と述べる。

 また、RISC-V Summitの組織委員会のメンバーでもあるCervero氏は、「大学や研究機関は、革新的なアイデアや技術向上 を実証することに注力している。われわれはアイデアをテーブル上に乗せて、その進歩を実証する。企業はその潜在可能性を確認して、利用しなければならない。このように責任を二分することで、研究を最先端の状態に維持しながら、産業界では実用的応用を推進していくことができる」と述べている。

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