放熱と冷却にも伝導、対流、放射を利用
サーバやデータセンターなどの放熱技術に注目が集まっている。演算処理を担うGPUとCPUの最大消費電力(熱設計電力(TDP))が増加しつつあることで、効率の高い放熱技術が強く求められるようになってきた。
そこで本コラムでは、サーバやデータセンターなどを支える最新の放熱技術をシリーズで前回から解説している。前回(初回)は熱に関する基礎的な知識を述べた。今回は放熱と冷却の基本的な技術を解説する。
前回では熱の伝わり方(熱の移動方法)に「伝導」「対流」「放射」の3種類があることを説明した。放熱あるいは冷却にも、これらの移動方法を活用する。さらに「相変化」(同じ物質が固体と液体、気体の間で変化)を利用することもある。
最もコストが低い自然空冷
冷却方式を熱輸送媒体(あるいは冷却媒体)で大別すると、気体と液体に分かれる。放熱に使われる代表的な気体は空気、代表的な液体は水である。
最もコストが低い放熱技術は「自然空冷(自然対流冷却)」だろう。発熱部付近の空気が温められて軽くなり、自然に上昇する。発熱部には周囲から重く冷たい空気が対流によって入り込む。発熱部に流入した空気は再び温められて上昇する。このサイクルを繰り返す。
通常の半導体パッケージは樹脂製なので熱伝導率が低い。そこで消費電力の大きな半導体デバイスでは、発熱部である半導体ダイあるいは樹脂表面にヒートシンクを貼り付け、熱伝導を利用することで放熱の効率を上げる。
自然空冷の放熱能力はあまり高くない。半導体デバイスの消費電力だと1W程度が自然空冷の限界とされる。一方で騒音がまったくない、信頼性が極めて高いといった特長を備える。
最も一般的な強制空冷
最も一般的な放熱技術は「強制空冷(強制対流冷却)」だろう。ファン(送風機)によって強制的に空気を供給あるいは排出することによって発熱部付近の空気を入れ換える。当然ながら放熱/冷却能力は自然空冷よりも高い。
ファンによる強制空冷は、ノートPCやデスクトップPC、タワーPC、サーバなどのコンピュータシステム、据え置き型ビデオゲーム、プロジェクター(映像投射器)、産業用電子機器などに普及している。
デスクトップPC本体の内部例。正面上にはCPUを冷却するためのファンとヒートシンク、左側は本体内部全体を冷却するためのファンが備わっている。筆者が過去に所有していたPCの内部を撮影したもの[クリックで拡大]
強制空冷の弱点は、ファンによる騒音がそれなりにあること。またファンがなんらかの不具合で止まると冷却能力が失われてしまう。複数のファンを組み込んで1個のファンが停止しても冷却を継続する、機器内の温度が許容値を超えたときに消費電力を下げた動作モードに移行するといった安全対策が望まれる。
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