EUVペリクルとして期待されるCNT 課題は製造法:Canatuが乾式生産法を開発(1/2 ページ)
EUV(極端紫外線)リソグラフィに使うペリクルの素材として注目を集めているのが、カーボンナノチューブ(CNT)だ。CNTにはメリットも多いものの、EUVペリクルに応用するには、生産法が課題になる。フィンランドCanatuは、CNTの新しい製造法の開発に取り組んでいる。
今日の半導体製造業界では、最先端のチップは、エラーがほとんど許されない7nm世代以下で製造されている。このミクロの世界にある困難と絶え間ないプレッシャーにもかかわらず、エンジニアと科学者は、「ムーアの法則」の限界を押し広げる最先端のプロセスや技術、材料の追求を諦めることなく続けている。設計者や研究者は、ナノスケールレベルでの果てしない実験を経て、チップメーカーに数百万米ドル、場合によっては数十億米ドルの収益をもたらす可能性のある微細な改良を見つけようと努力を重ねている。
EUV(極端紫外線)リソグラフィの非効率性に対処する有力な代替材料として登場したカーボンナノチューブ(以下、CNT)は、そうしたイノベーションの1つになる可能性がある。しかし、現在の製造方法では、期待に応えられるCNTは作れない。CNTの可能性を最大限に引き出すには、CNTの品質を大きく向上させる新しい製造方法が必要である。そうして初めて、半導体業界が先進チップに対するとどまることのない需要に応えることができる。
CNTの製造方法を検討する前に、まず、CNTがなぜ半導体業界でそれほど重要であるのかを理解する必要がある。
EUVリソグラフィにも不可欠なペリクル
それには、最初にEUVリソグラフィについて理解しなければならない。EUVリソグラフィは、フォトマスクから、EUV光でシリコンウエハー上に回路パターンを形成する半導体製造プロセスである。マスクの使用前にEUVマスク検査装置で欠陥がないかを検査し、デブリフィルターでマスク検査ツールの光学系を清潔に保って、エラーのない検査を保証する。マスクを作製してEUVスキャナーにセットした後、粒子がマスクに付着しないように、極薄の膜であるペリクルをマスクに取り付ける。膜を構成する材料が異なれば、この重要なタスクの遂行精度も変わってくる。保護能力を向上させるためのさまざまな材料を使用して実験した結果、CNT膜が最適であることが判明している。
ただし、最も管理された環境であっても、7nm以下のチップを製造する際にはエラーが発生する可能性がある。EUVプロセスでは、転写中にほこりの粒子がフォトマスクに付着すると、ウエハーに転写されたパターンに欠陥が生じてチップの故障につながり、コストが掛かることになる。チップメーカーは、転写時にパターンを汚染する可能性のある粒子からフォトマスクを保護するために、フォトマスクに薄い膜を貼り付けてナノ粒子の汚染物質をフィルタリングして欠陥を防いでいる。
EUVペリクルと呼ばれるこの薄膜は、重要な保護特性を持っているだけでなく、転写に必要なEUV光の高透過率も実現する。
EUVペリクルは、あらゆる半導体メーカーやファウンドリーにとっての懸念事項となっている、半導体チップの欠陥(コストが非常に高くつく)を防止する上で、極めて大きな役割を果たすといえる。
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