独自モールドタイプモジュールで車載SiCの主戦場へ挑むローム:PCIM Europe 2024(2/3 ページ)
ロームはドイツ・ニュルンベルクで開催された世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe 2024」の初日に記者会見を行い、同社取締役常務執行役員パワーデバイス事業担当の伊野和英氏がSiCパワーデバイス新製品の概要や、事業の展望などを語った。
「車載SiCの主戦場」へ挑む、新SiCパワーモジュールの詳細
重要な技術の3つ目として挙げたのが、ロームが同日発表した2in1仕様のモールドタイプSiCパワーモジュール「TRCDRIVE pack」だ。
TRCDRIVE packは300kWまでのxEV(電動車)用トラクションインバーターに向けたもの。xEVにおける各アプリケーションの市場規模(下図)をみると、トラクションインバーターはその大半を占める「車載SiCの主戦場」となっているが、同社は「これまでロームには競争力があるモジュールがなかった」と説明。今回、小型化や高い電力密度、実装工数削減、高い生産性といった特長を有するフルSiCモジュールを開発したことで、この主戦場でのシェア拡大を図っていく。
TRCDRIVE packの最も大きな特長は、「Press fit pin」を用いた制御用信号端子をモジュール上面に備えている点だ。ゲートドライバー基板を上面からプレスするだけで接続可能となり、実装工数の削減につながるという。Press fit pinはケースタイプモジュールでは広く用いられているが、モールドタイプで実現するためには、リードフレームにピンが実装された状態で樹脂封止する必要があり、ピン間の公差(距離の精度)を確保することが難しかったという。ロームは今回、内部のレイアウトと独自のモールド技術によってこの課題を解決したという。また、独自のモールドモジュール構造によって、両面放熱モジュール同等の放熱性能を小型/片面放熱で実現している。
この構造および、内部のチップ間に電流が流れる独自のレイアウト設計の採用などから従来パッケージ技術の場合と比べ28%小型となった。また、低インダクタンス(5.7nH)化も実現し、電力密度は「業界トップクラス」(同社、電流密度19.1Arms/cm2※「BST780D12P4A163」において)を達成していることなどから「xEV用インバーターの小型化に大きく貢献する」と強調している。
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