小型なテラヘルツ波光源を開発 手軽に非破壊検査が可能に:最大ピーク出力は15W(1/2 ページ)
理化学研究所は2024年9月6日、手のひらサイズかつ軽量でありながら、ピーク出力が10W超の高輝度/周波数可変なテラヘルツ波光源の開発に成功したと発表した。持ち運びが可能なため、実験室外でも簡単にテラヘルツ波非破壊検査が可能になる。
理化学研究所(以下、理研)は2024年9月6日、手のひらサイズの高輝度テラヘルツ波光源の開発に成功したと発表した。サイズは139×55×37mm、重量は453gと小型/軽量でありながら、0.3THz帯のテラヘルツ波パルス出力として最大ピーク出力は15W、周波数可変幅は60GHzを達成している。持ち運びが可能なため、今後、実験室外でも簡単にテラヘルツ波非破壊検査が可能になる。
開発したテラヘルツ波光源とスマートフォンとのサイズ比較写真。スマートフォンの画面には、このテラヘルツ波光源の動作原理であるバックワード・テラヘルツ波パラメトリック発振の概略図を示している[クリックで拡大] 出所:理研
今回の光源開発には、光波長変換であるバックワード・テラヘルツ波パラメトリック発振の原理を活用。励起光源となるマイクロチップパルスレーザーと、非線形光学結晶として周期分極反転結晶を含む最低限の光学系を筐体に配置することで、小型/軽量化に成功した。
開発したテラヘルツ波光源では、装置内部で発生させたテラヘルツ波を、筐体側面に配置したテラヘルツ波用レンズを通して取り出す。高速応答のテラヘルツ波用検出器で測定したところ、取り出したテラヘルツ波のパルス幅は0.60ナノ秒、ピーク出力は最大15Wだった。従来の半導体テラヘルツ波光源の平均ピーク出力がミリワットクラスであることを考えると、高いピーク出力を実現できたことが分かる。
また、同技術には、励起光の光軸に対して周期分極反転結晶を回転させる自動制御機構を搭載している。これにより、バックワード・テラヘルツ波パラメトリック発振の位相整合条件を外部から連続的に変化させ、テラヘルツ波周波数を同調することが可能だ。研究では、周期分極反転結晶を回転させて、テラヘルツ波と対となって発生するアイドラー光のスペクトルを測定した。結果、励起光とアイドラー光の周波数差に相当するテラヘルツ波周波数を0.29THz〜0.35THzの範囲で同調することに成功した。
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