小型なテラヘルツ波光源を開発 手軽に非破壊検査が可能に:最大ピーク出力は15W(2/2 ページ)
理化学研究所は2024年9月6日、手のひらサイズかつ軽量でありながら、ピーク出力が10W超の高輝度/周波数可変なテラヘルツ波光源の開発に成功したと発表した。持ち運びが可能なため、実験室外でも簡単にテラヘルツ波非破壊検査が可能になる。
繊維布で隠されたテストターゲットパターンの可視化に成功
理研は、テラヘルツ波による非破壊検査イメージングの一例も紹介した。測定サンプルには、ガラス基板上に金属コーティングされたテストターゲットパターンを使用。テラヘルツ波の散乱や吸収を無視できないタオル地繊維布で覆い隠して、反射イメージング測定を実施した。その結果、下図に示す通り、テストターゲットパターンの反射イメージを非破壊で明瞭に可視化することに成功した。
なお、開発したテラヘルツ波光源が小型/軽量であることから、測定サンプルの位置は固定したまま、光源(測定光学系)を動かして測定した。測定光学系は精密な調整が必要なので、サンプルを移動させて測定するのが一般的だという。
テラヘルツ波非破壊検査装置の開発では、異なる計測対象に対して最適なテラヘルツ波周波数を選択したり、光干渉断層測定法による3次元計測を実現したりするために、広帯域に周波数可変性を持つ必要がある。また、テラヘルツ波に対する吸収が数桁異なるさまざまな計測対象に対して高速かつ高い信号対雑音比で計測を行うために、装置全体を持ち運びできるように小型/軽量化することが求められている。
現在、パルスレーザーを励起光源に用いた光波長変換によるテラヘルツ波発生法が、高輝度特性と周波数可変性を同時に満たす有力な候補として注目されている。しかし、パルスレーザーを発生させるレーザー装置が大型であり、精密な光学調整を必要とするため、小型/軽量化することが難しいという課題があった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- サブテラヘルツ波でコンクリ内の鉄筋腐食を評価
芝浦工業大学は、コンステックや東北大学と共同で、サブテラヘルツ波を用いコンクリート内部の鉄筋腐食状態を、非破壊、非接触で評価できる技術を開発した。構造物調査の実施率向上や予防保全型維持管理体系の構築を目指す。 - 6G向けに3次元バルクメタマテリアルの屈折率特性を向上
東北大学の研究グループは、2層スプリットリング共振器を3次元的に不規則配置した「3次元バルクメタマテリアル」を開発した。6G(第6世代移動通信)に向けたメタマテリアルとして、屈折率特性をさらに向上させた。 - 半導体テラヘルツ発振器の位相計測と制御に成功
京都大学の研究グループは大阪大学やロームと共同で、共鳴トンネルダイオードを搭載した半導体テラヘルツ発振器から放射されるテラヘルツ電磁波の振動波形(位相)を計測し、制御することに成功した。テラヘルツ波の位相情報を利用した超高速で大容量の無線通信やスマートセンシング技術の実現につながるとみられる。 - 超伝導体にテラヘルツ波を照射、臨界電流が大きく変化
京都大学の研究グループは、超伝導体薄膜にテラヘルツ波を照射すると、臨界電流が大きく変化する現象を発見した。観測された特異な超伝導スイッチング現象は、新たな超伝導デバイス開発や性能改善にも貢献するとみられている。 - 感度を一桁以上向上、テラヘルツ波検出素子を開発
東北大学と理化学研究所の研究グループは、インジウムリン系高電子移動度トランジスタ(HEMT)をベースとしたテラヘルツ波検出素子で、新たな検出原理が現れることを発見。この原理を適用して、検出感度を従来に比べ一桁以上も高めることに成功した。6G/7G超高速無線通信を実現するための要素技術として注目される。