独自NPUで差異化 広範なマイコン群でエッジAIを支援するNXP:推論速度が30倍になる事例も(2/3 ページ)
AI(人工知能)関連技術の進展が加速する中、エッジデバイス上でAI推論を行うエッジAIの導入が進んでいる。中でも、より低消費電力/低コストのマイコンを用いるケースへの注目が高まっている。マイコン/プロセッサを多く手掛けるNXP SemiconductorsのエッジAI向け戦略とポートフォリオについて、NXPジャパンに聞いた。
自社開発のNPUをマイコンにも搭載
NXPは、マイコン/クロスオーバーマイコン/プロセッサのいずれのカテゴリーでもエッジAI向けの製品を用意している。
最大の特徴は、プロセッサの「i.MX 95」(開発中)とマイコンの「MCX N94x」「MCX N54x」に自社開発のNPU(ニューラルプロセッシングユニット)「eIQ Neutron」を搭載していることだ。
MCX N94x/N54xに搭載したeIQ Neutronは、Arm Cortex-M33コアの30倍以上のスループットを実現できるという。ピークの消費電力はM33コアよりも大きくなるが、推論時間を短縮できるため、全体としての消費電力は大幅に削減できる。
マイコンで顔検知や物体識別 NPU使用で38倍高速に
MCX N94x/N54xは、エッジAIのユースケースのうち演算負荷が比較的小さい顔検知/物体識別、音声認識/制御、ビデオのアップスケーリングやノイズ除去、異常検知や予知保全に用いることができる。複数の顔認識や自然言語処理を行いたければクロスオーバーマイコンの「i.MX RTシリーズ」、マルチスピーカー認識やジェスチャー認識ならばプロセッサの「i.MX 8M Plus」、さらに高度なマルチオブジェクト認識や音声アクセントの解析を行いたい場合はi.MX 95を用いるというように、演算負荷に合わせてハードウェアを選択できる。
「MCX N947」を用いた顔検知のデモでは、NPUを使用すると、使用しない場合と比べて約38倍高速に処理できたという。異常検知のデモでは、モーターの制御と振動データに基づく異常検知を1つのマイコンで実現できることを確認したという。
NXPのマイコン/プロセッサ製品群で初めてNPUを搭載したのはプロセッサのi.MX 8M Plusだが、ここには他社IP(Intellectual Property)のNPUを使用している。しかし、IPベンダーが販売しているNPUはハイエンド志向で高コストのものが多く、マイコンに最適化しコストを抑えたものがなかったことから、自社開発に至ったという。「今後、eIQ Neutronの性能を拡張していく。コストを最重要視する製品などの例外を除いて、NPUはNXPのマイコン/プロセッサの標準的な機能として搭載する予定だ」(浜野氏)
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