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ソニーとラズパイが「AIカメラ」を共同開発、両社に狙いを聞いた「AITRIOS」の拡大へ(1/2 ページ)

ソニーセミコンダクタソリューションズと英国Raspberry Pi社が、シングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」用のAIカメラを共同開発した。今回、両社にこの製品が開発者にもたらすメリットや事業展開における狙いなどを聞いた。

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 ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)と英国Raspberry Pi社が、シングルボードコンピュータ(SBC)「Raspberry Pi」用のAI(人工知能)カメラを共同開発した。今回、両社にこの製品が開発者にもたらすメリットや事業展開における狙いなどを聞いた。

 両社が発表したのは、SSSが2020年に発表したAI処理機能搭載のイメージセンサー「IMX500」を搭載した「Raspberry Pi AI camera」(以下、AIカメラ)だ。製品の詳細については、下記記事で紹介している。

 SSSは2023年4月、Raspberry Piに出資し、戦略的協業体制を構築すると発表。SSSのAI技術を用いた製品群をRaspberry Piのエコシステムに導入するとともに、世界中のRaspberry Piユーザーのコミュニティーに向け、SSSのエッジAIソリューションの開発プラットフォームを提供していくことを目指すとしていた。今回の製品は、この戦略的協業の最初の成果だという。

ラズパイコミュニティー開発者への利点

 Raspberry PiのCEO(最高経営責任者)を務めるEben Upton氏は今回の発表に合わせ、「世界中の開発者にとってAIによる画像処理は非常に魅力的なツールだ。今回開発したのは、イメージセンサーのリーディングカンパニーであり、なおかつわれわれの長年のパートナーであるSSSの技術と知見を融合させた、Raspberry Pi AIカメラだ。このAIカメラを使って、コミュニティーの皆がどのようなアプリケーションを創り出すのか、非常に楽しみにしている」とのコメントを寄せている。

Raspberry Pi AI camera[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ
Raspberry Pi AI camera[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ

 では、Raspberry Piコミュニティーの開発者は、ビジョンAI開発において何を求めていて、新製品がどのような課題に対応できるのだろうか。Upton氏はEE Times Japanに対し、「使い慣れていて、サポート体制の整ったハードウェアやソフトウェアで構築できることは大きなメリットで、Raspberry Piのコミュニティーの規模の大きさが価値をもたらしているという顧客の声は多い。何か難しいことを実現しようとしたり、問題を解決しようとしたりする際、ほとんどの場合、既に同様のソリューションが開発されている」と説明。さらに「広く使用されている『libcamera』および『Picamera2』ライブラリ、そして『rpicam-apps』アプリケーションスイートは、AIカメラが出力するテンソルメタデータのサポートを提供している。この強固なソフトウェアサポートは、ユーザーに大きなパワーと柔軟性を提供するとともに、経験の浅いユーザーにもカメラをアクセスしやすくしている」などと強調している。

 また、Upton氏は、今回の製品について「AIカメラが備える画像処理機能は、開発者にとってなじみ深いものだ。物体が動いているときでも検知し、色、形状、方向などの特徴を識別できる。今回の新製品が他のシステムと異なるのは、これらの機能が簡単に低コストで実装できることだ。電力要件は低く、処理はローカルで行われるため、プライバシーやセキュリティに関する懸念にも容易に対応できる」とも述べている。

AI Kitとの違い

 Raspberry Piは2024年6月にも、イスラエルのHailo Technologiesが展開するAIアクセラレーターIC「Hailo-8L」搭載モジュールなどで構成し、最大13TOPSの処理性能を実現する「Raspberry Pi AI Kit」(以下、AIキット)を発表。価格も今回のAIカメラと同じ70米ドルで設定していた。

 この2製品の住み分けについて、Upton氏は「AIカメラは、カメラと別のAIアクセラレータの両方を必要とする専用ビジョンベースのアプリケーションに最適だ。開発者は、Raspberry Piカメラアプリケーション内の強固なソフトウェアサポートを活用できる。AIキットは、ビジョンアプリケーションには別のカメラモジュールが必要となるが、画像処理だけでなく、その他の多くのAIアプリケーションに利用可能だ。また、AIカメラは、Raspberry Pi ZeroおよびZero2 W(それぞれ10米ドル、15米ドル)を含む、Raspberry PiのSBC全製品と互換性がある。一方、AIキットは、Raspberry Pi 5とのみ互換性がある」と説明。「この2製品によって、ユーザーはさまざまなAIアプリケーションに最適な方法を選択できる」と述べている。

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