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Intelの資金難、Samsungの生産遅れ…… CHIPS法に危機補助金を回収する可能性も(1/2 ページ)

IntelやSamsung Electronicsなど、米国のCHIPS法が支援する大手半導体メーカーの生産に遅れが出ている。これは、米国政府の景気刺激策が期待通りの成果を上げられない可能性を示している。

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 IntelやSamsung Electronics(以下、Samsung)など、米国のCHIPS法が支援する大手半導体メーカーの生産に遅れが出ている。これは、米国政府の景気刺激策が期待通りの成果を上げられない可能性を示している。

 Intelは、欧州で予定していた工場の新設を遅らせることを決定した。IntelのCEO(最高経営責任者)を務めるPat Gelsinger氏は2024年9月、「市場の需要予測に基づき、ポーランドとドイツのプロジェクトを約2年停止する」と述べた。ただし、アリゾナ州/オレゴン州/ニューメキシコ州/オハイオ州のCHIPS法に関連する米国投資は予定通り継続するという。

 だが、Albright Stonebridge Groupでグローバルなテック企業のアドバイザーを務めるPaul Triolo氏によると、Intelが100億米ドルを投じて複数の半導体工場を建設する予定であるオハイオ州の新施設には、同施設の中で最もコストの高い部分である、生産設備の導入がまだ行われていないという。

 Triolo氏は米国EE Timesに対し、「IntelがCHIPS法に基づいて掲げる、米国におけるコミットメント全体が危機に直面している可能性がある。その原因は、Intelが設計部門と製造部門の分割を検討していることにあると考えられる。米国商務省長官のGina Raimondo氏は、NVIDIAやQualcommといった米国のファブレスメーカーに対して、米国にあるIntelの生産施設を利用するよう呼び掛けているという。それも施設が建設され、実証済み先進プロセスが稼働する前にもかかわらずだ。Intelへの巨額の資金拠出が約束されていることを考えると、CHIPSプログラムの事務局がパニックに陥っていることがうかがえる」と語った。

 Gelsinger氏は、Intelのオハイオ州への初期投資額は200億米ドルから1000億米ドルに膨れ上がる可能性があると述べていた。

CHIPS法で最大額の補助を獲得のIntelが資金難に

 アナリストらによると、Intelは資金難に陥っているという。同社は米国政府から30億米ドルの「救命措置」を受け、半導体ファウンドリの潜在顧客に売り込みをかけたと報じられている。

 Intelは2024年9月16日(米国時間)、CHIPS法に基づき、米国政府のSecure Enclaveプログラムで最大30億米ドルの直接資金提供を受けると発表した。同プログラムは、米軍向けに最先端半導体を確実に供給することを目的としている。米国のニュース専門チャンネルであるCNBCはこの発表の数日前に、CHIPS法プログラムを監督する米国商務省(DoC)長官のGina Raimondo氏がGelsinger氏と会談し、AppleやNVIDIAなどの企業にIntelの顧客になるよう個別に要請したと報じていた。この件について、IntelとDoCはコメントを拒否している。

 米国政府は2024年3月、約200億米ドルの融資と補助金を条件付きでIntelに交付すると発表した。これは、CHIPS法に基づいて半導体メーカー1社に交付される補助金としては最大額となる可能性がある。

 さらに最近、Intelは業績の悪化に伴い、人員と設備投資の削減を行っている。同社は下半期の需要が縮小するとの見通しを反映して、従業員の15%を削減し、新工場への2024年の設備投資額を20%以上減となる250億〜270億米ドルに抑えると発表した。

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