機械学習モデルを用いて新たな有機半導体を合成:効率良く有機半導体分子を設計(1/2 ページ)
大阪公立大学は、機械学習モデルを用いて7種類の新しい有機半導体分子を設計、合成しその評価を行った。この結果、分子間相互作用が強い分子は、比較的高い正孔移動度を示し、有機半導体特性が向上することを発見した。
より強固な分子間相互作用で、有機半導体特性が向上
大阪公立大学の研究グループは2024年9月、機械学習モデルを用いて7種類の新しい有機半導体分子を設計、合成しその評価を行った。この結果、分子間相互作用が強い分子は、比較的高い正孔移動度を示し、有機半導体特性が向上することを発見した。
有機半導体は、有機ELディスプレイや有機太陽電池などに応用されている。ただ、有機半導体の性能を改善していくには、実際に合成した材料を用いてデバイスを作製し、その特性を評価していた。このため開発効率としてはあまり良くなかった。
研究グループはこれまで、コンピュータ上でアモルファス固体をモデリングして有機半導体の特性を予測し、実際の化合物と比較する方法を提案してきた。今回は、機械学習を用いて有機半導体の特性予測と分子設計を行い、実際に数種類の半導体について分岐的合成と物性評価を行った。
実験ではまず、文献調査により321種類の有機半導体分子の構造情報と正孔移動度(μ)のデータを収集し80%を学習データに、20%をテストデータにそれぞれ分割し、機械学習によって相関データを作成した。
この結果、有機半導体の特性については、分子に水素結合アクセプター原子である窒素(N)や硫黄(S)の個数(NHBA)が重要であり、その最適範囲はNHBA=4〜6であることを突き止めた。特性向上の理由としては、「水素結合アクセプター原子の導入によって、より強固な分子間相互作用が働く」ことを挙げた。
これを実証するため、NHBAが5となる「ジチエノベンゾチアゾール(DBT)」という新規半導体分子を設計し、臭化物5から誘導体化を行う分岐的合成戦略により、7種の有機半導体1a-1gを合成した。
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