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機械学習モデルを用いて新たな有機半導体を合成:効率良く有機半導体分子を設計(2/2 ページ)
大阪公立大学は、機械学習モデルを用いて7種類の新しい有機半導体分子を設計、合成しその評価を行った。この結果、分子間相互作用が強い分子は、比較的高い正孔移動度を示し、有機半導体特性が向上することを発見した。
X線結晶構造解析を実施
さらに、合成した有機半導体1a-1gについて、化合物のX線結晶構造解析を行った。隣接する分子間の電荷移動積分を計算した結果、一次元的に高い値をもつ結晶と、二次元的に多方向に高い値をもつ結晶があることを確認した。特に1bと1cでは、S原子やN原子が隣接分子と水素結合を示したほか、S原子同士の相互作用(S・・・S接触)も確認された。
合成した有機半導体を用いて有機トランジスタを作製し、その特性を評価した。この結果、結晶相で強い分子間相互作用が働く1bでは、正孔移動度が0.1cm2V-1s-1程度となり、有機半導体として高い性能を示すことが分かった。
今回の成果は、大阪公立大学大学院工学研究科の大垣拓也特任助教、松井康哲准教授、内藤裕義特任教授、池田浩教授、理学研究科の麻田俊雄教授らによるものである。
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