「お皿サイズの巨大AIチップ」を手掛けるCerebrasが上場へ:大口顧客は1社でリスクも(1/2 ページ)
データセンター用の巨大なAI(人工知能)チップを手掛ける米Cerebras SystemsがIPO(新規株式公開)を申請した。ただし懸念もある。その一つが、売上高のほとんどをアラブ首長国連邦アブダビの技術メーカーG42を占めていることだ。
「過大評価」の批判を乗り越えIPO書類を提出
米国シリコンバレーのAI(人工知能)チップのスタートアップであるCerebras Systems(以下、Cerebras)は、IPO(新規株式公開)の書類を提出した。Cerebrasは米証券取引委員会(SEC)に目論見書「Form S-1」を提出し、ティッカーシンボル「CBRS」でナスダックに上場する意向を示した。IPOの価格帯やスケジュールは未定だが、この申請により、同社の財務状況と、最大の顧客であり、パートナーおよび投資家でもあるアラブ首長国連邦(UAE)アブダビに拠点を置く技術メーカーG42との関係が注目されている。
Cerebrasは、データセンターのAIトレーニングと推論、その他のHPC(High Performance Computing)および科学計算アプリケーション向けのラックスケールシステムの一部として、ウエハースケールチップ(WSC)を提供している。同社はまた、自社のクラウドおよびG42のCerebrasベースのクラウドを介してクラウドコンピューティングも販売している。Cerebrasは最近、オープンソースのある生成AIモデル向けのAPI(Application Programming Interface)推論サービスを開始し、シングルユーザーで驚異的な速度を示した。
データセンター向けのトレーニングおよび推論チップを開発するために多額の資金を調達したAIチップタートアップは数社あるが、IPO書類を提出したのはCerebrasが初となる。同社や競合スタートアップは、これまでわずかな収益しか上げていないにもかかわらず、過大評価され、巨額の投資を集めているとして業界から批判されてきた。CerebrasのS-1申請は、同分野のスタートアップの収益額が公開される初めてのケースとなる。
売り上げの大半を占めるG42
申請書類によると、Cerebrasの2022年の売上高は約2500万米ドルで、2023年には7900万米ドルに急増し、2024年上半期は1億3600万米ドルだったという。2023年の売上高の83%、2024年上半期の87%をG42 1社が占めているという。通常、単一の顧客が売上高の大部分を占めることは、その顧客からの需要の変動による影響が大きくなるため好ましくないと考えられる。
申請書類からは、G42以外の顧客からも“かなりの収益”を上げているが、顧客数は限られていることが分かる。2023年末時点で、同社の主要顧客はG42を含め4社だったが、2024年上半期には2社に減少した。申請書類によると、同社の顧客基盤には「大手企業、ソブリンAIイニシアチブ、クラウドサービスプロバイダー、政府機関、研究機関」が含まれるという。
米国EE Timesが2024年7月に報じたように、G42はCerebrasと提携して、CerebrasベースのAIスーパーコンピュータ9台の構築を計画している。G42は、さまざまな業種向けにAI、クラウドコンピューティング、データ分析関連の製品やサービスを提供している。同社は、アブダビ政府が所有する国有投資会社であるMubadalaが一部所有しており、Microsoftやプライベートエクイティ企業のSilver Lakなど、他の投資会社も一部所有している。
現在の合意の下、CerebrasはG42にハードウェアを販売するが、その後G42の米国データセンターの立ち上げと運用を同社に代わって行い、未使用のコンピューティング能力をCerebrasのクラウドトレーニングおよび推論の顧客に提供する。同社は、以前はG42を「戦略的パートナー」と呼んでいたが、今回の申請書類では「顧客、パートナーおよび投資家」と表現している。
Cerebrasの申請書類によれば、G42、またはその関連会社やパートナーが14億3000万米ドルのCerebras製品およびサービスを購入し、2025年2月までに前払いする契約だという。このうち3億5000万米ドルはアブダビのMohamed bin Zayed University of Artificial Intelligence(MBZUAI)から提供されるとしている。
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