「お皿サイズの巨大AIチップ」を手掛けるCerebrasが上場へ:大口顧客は1社でリスクも(2/2 ページ)
データセンター用の巨大なAI(人工知能)チップを手掛ける米Cerebras SystemsがIPO(新規株式公開)を申請した。ただし懸念もある。その一つが、売上高のほとんどをアラブ首長国連邦アブダビの技術メーカーG42を占めていることだ。
Cerebrasの株式取得も予定
G42は2021年にCerebrasの株式の約1%を約4000万米ドルで取得し、2025年にはさらに3億3500万米ドル相当の株式を購入する予定だ。G42が2025年末までにCerebrasに5億〜50億米ドルを投じる場合(上記の14億3000万米ドルの契約を除く)、追加の株式を割引価格で購入できるオプションも用意されているという。
Cerebrasのウエハースケールハードウェアは米国の輸出規制の対象となっていて、米国産業安全保障局(BIS)からライセンスが付与された場合のみ、特定の国にシステムを輸出できる。CerebrasはUAEのG42に「CS-2」システムを輸出するためのライセンスを付与されているが、これまでにG42に販売したシステムは全て、ライセンスを必要としない米国内で展開される予定だという。申請書類では、ライセンス要件によってCerebrasの販売前および販売後の技術サポートが煩雑になり、その影響を受ける顧客が中国や欧州、イスラエルの競合他社を選択する可能性があると指摘している。なお、BISのライセンス要件は、随時変更される可能性があるという。
AIモデルの収束時間を68日から4日に短縮
申請書類によると、G42は、Cerebrasのハードを使うことで、130億パラメータのアラビア語AIモデルの収束時間を大幅に短縮したという。GPUクラスタでは68日かかっていた収束時間が、Cerebrasのハードによりわずか4日に短縮したとする。それに続いて、Cerebrasハードウェアでトレーニングされた300億パラメータのアラビア語-英語モデルが、現在「Microsoft Azure」のAIモデルカタログで提供されている。
Cerebrasの他の顧客はどこになるだろうか。企業名は明らかにされていないが、申請書類には、政府および企業向けにAIソリューションを開発している欧州のAI企業が、400万米ドル超でCerebrasのハードを初めて購入したと記載されている。その他の顧客として、製薬会社、医療サービスプロバイダー、多数の米国国立研究所、米国政府機関が挙げられている。米国政府機関は、RFシステム開発用シミュレーションでのリアルタイム推論にCerebrasのハードウェアを使用している。
製造はTSMC
提出書類に記載されているリスクの多くは、ファブレス半導体企業全般に当てはまるものだが、CerebrasのWSCは、TSMCに製造を委託しているので、よりリスクが高いとされている。Cerebras申請書類に、「当社はTSMCから正式な長期供給または割り当ての確約を受けていない。TSMCは当社の競合を含む他社のウエハーも製造している。その中には、当社よりもはるかに規模が大きく、TSMCから当社よりもはるかに多くのウェハーを購入している企業もある」と記載している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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