好調なんてとんでもない! 前年比28%増を記録した半導体市場の現在地:大山聡の業界スコープ(81)(1/2 ページ)
世界半導体市場統計(WSTS)によれば、2024年8月の世界半導体市場規模は前年同月比28.0%増と大きく成長した。果たしてその数字通り、半導体市場は好調なのだろうか。半導体市場の現状と今後の見通しについて考えてみた。
世界半導体市場統計(以下、WSTS)によれば、2024年8月の世界半導体市場規模は前年同月比28.0%増、2024年7月の同18.0%増を大きく上回る成長を記録した。しかしこれはメモリ市場が非常に強い伸びを示したためで、メモリ以外の市場ではあまり芳しくない状況が続いている。日系半導体メーカーの多くはマイコン、アナログ、ディスクリートなどを主力製品としており、これらの製品分野は前年を下回る成長にとどまっているのが現状である。2024年10月下旬から11月上旬にかけて、各社の中間決算が発表される予定だが、多くの企業において半導体事業の厳しい現状が開示されることになるだろう。今回は、半導体市場の現状と今後の見通しについて、私見を述べさせていただく。
突出するメモリの成長
図1は、世界半導体市場規模の動向を前年同月比の推移で表したもので、半導体トータル(Total Semi)、メモリ(Memory)、メモリ以外(Non-Memory)の動向をグラフ化している。半導体トータルは、2024年の初頭から2桁成長を維持し、直近(2024年8月)は前年比28.0%増という実績だった。しかしグラフを見ると、メモリ市場の成長率が飛び抜けていて、直近では同147.9%増を記録している。一方のメモリ以外の市場は、直近の実績が同5.4%増と、辛うじてプラス成長を保っている状況である。
実際に製品市場別に直近の成長率を見てみると、メモリ以外で2桁成長を記録しているのはロジックの同18.2%増だけ。ディスクリートは同16.2%減、光半導体は同0.3%増、センサーおよびアクチュエーターは同2.7%増、アナログは同0.0%減、マイクロは同5.7%減になっている。
プラスに転じるのはまだ先 ディスクリート
小信号トランジスタとパワートランジスタなどで構成されるディスクリート市場は2024年1月から2024年8月までの累計では前年比14.2%減と、厳しい市況が続いている。小信号トランジスタ市場は、2023年の初頭から前年を大きく下回る状況が続いていたが、2024年初頭をボトムに徐々に回復基調にある。コロナ禍のパンデミックで膨らんだ仮需が在庫になっていたが、この在庫が片付くメドが立ちつつある、とみてよいだろう。一方のパワートランジスタ市場は、2024年初頭からマイナス成長に落ち込んでいて、いつ頃ボトム状態になるのか、まだ見極められていない。こちらは仮需ではなく、クルマの電動化のキーデバイスとして実需が増加していたはずだが、2年以上にわたって不足状態が続いたときに、やはり仮需も相当膨らんでしまったようである。年末までにボトム状態が確認できれば御の字だが、調整局面は2025年中ごろまで続く可能性もあるだろう。パワートランジスタはディスクリート市場の約7割を占めているため、ディスクリート市場全体がプラス成長に転じるのはまだ先になりそうである。
スマホ次第 光半導体
光半導体市場は、2024年1月から8月までの累積では前年比4.1%減、あまり芳しくない市況が続いている。光半導体の半分近くがイメージセンサーで占められており(金額ベース)そのイメージセンサーは7割以上がスマホ向けに出荷されている。1台のスマホに搭載されるカメラの台数が増えれば、イメージセンサーの需要も増加するが、イメージセンサー市場も何とかプラス成長を維持しているレベルで、光半導体全体をけん引するだけの力強さはない。スマホ市場は2024年も精彩を欠いているので、2025年以降の活性化に期待したいところである。
25年以降にプラスに転じる可能性大 センサー&アクチュエーター
センサーおよびアクチュエーター市場は、2024年1月から8月までの累積では前年比9.0%減、2022年末からずっとマイナス成長が続いており、2024年8月に久々にプラス成長を記録した。このデバイスは約5割がクルマ向け、約3割がスマホ向け、約2割がその他向け、という特徴があり、クルマのADAS需要の増加の波に乗って成長してきた。2023年に初めてマイナス成長に落ち込み、この傾向が2024年7月まで継続していたのは、クルマ向けの需要が低迷していることが原因と思われる。ただしクルマ市場が低迷しているわけではなく、デバイスの在庫が過剰に積み上がっていることが問題だと思われるので、2025年以降はプラス成長に転じる可能性が高い。
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