ローム、一転通期赤字を予想 SiC投資にブレーキ:BEV普及の減速など(2/3 ページ)
ロームは2024年度通期業績について、売上高を期初予想比300億円減の4500億円、営業利益を150億円の赤字(期初予想は140億円の黒字)、純利益を60億円の赤字(同140億円の黒字)にそれぞれ下方修正した。
設備投資にブレーキ、25年度は1000億円以下に
ロームはこうした状況から、投資計画を大きく見直した。同社は、主にSiC事業向けで2023年度には設備投資に1867億円を投資。2024年度にはさらに1650億円を投資する計画だったが、今回、期初計画比150億円減となる1500億円に減額すると説明した。さらに2025年度は、従来は1400億円程度と想定していた投資額を1000億円以下に抑える見通しだという。
ロームはSiC事業だけで2021〜2027年度までに5100億円を投じる計画を掲げていたが、これが4700億〜4800億円に減ることになるという。松本氏は、「SiCを中心に、先行投資フェーズから需要に合わせて戦略的に投資をしていくフェーズに入った」と語っていた。
ロームはSiC事業について、2025年度に売上高1100億円という目標を掲げていた。しかし、産機関係およびEV市況の減速といった状況から達成時期を2026〜2027年度へと後ろ倒しにした。また、製造能力についても、今後の需要に応じて強化をしていく方針とし、前回発表から後ろ倒しに調整している(右下図)
宮崎第ニ工場での8インチ量産開始は2025年に変更
ロームはSiCウエハーの8インチ化を進めていて、2025年には筑後工場(福岡県筑後市)で量産開始予定だ。さらに、ソーラーフロンティアから取得した宮崎第二工場(宮崎県国富町)においても、2024年中に8インチSiC基板の生産を開始する予定としていたが、今回、この基板生産の開始時期を2025年に変更したことも明かした。ロームはSiCパワー半導体の生産能力について、2025年度には2021年度比6.5倍、2030年度には同35倍にする計画を掲げていたが、松本氏は「2025年度の6.5倍の目標は1年ずれるイメージだ」と語った。
なお、宮崎第二工場は稼働準備は既に完了していて、今後の需要に応じて製造装置を導入していく方針。上述の生産能力強化の目標については宮崎第二工場に装置を導入していくことで対応可能であり、松本氏は、「市場が伸び、われわれのシェアが上がってくればそこまでの生産能力増強ができる準備は整った」としている。
また、松本氏は8インチ化について進捗は順調だとしたうえで、「6インチから8インチになれば取れ数は1.78倍になる。われわれは、歩留まりも向上しているため実際には2倍近くの取れ数となることから、8インチ化を加速することでコスト競争力は大幅に上がる」と強調。さらに新世代品投入を2年ごとに早めることによる性能での競争力強化にも触れ、「SiCでは、この2つの柱をもって、需要を見ながら進めていきたい」と語っていた。
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