トップレベルの2量子ビットゲート性能を実証、東芝:超伝導量子コンピュータの性能向上(1/2 ページ)
東芝と理化学研究所(理研)の共同研究グループは、超伝導量子コンピュータに向けて東芝が提案する素子「ダブルトランズモンカプラ」の特性を、実験により実証した。この結果、2量子ビットゲートの忠実度が99.90%とトップレベルにあることを確認した。
東芝が提案する素子「ダブルトランズモンカプラ」で達成
東芝と理化学研究所(理研)の共同研究グループは2024年11月、超伝導量子コンピュータに向けて東芝が提案する素子「ダブルトランズモンカプラ」の特性を、実験により実証したと発表した。この結果、2量子ビットゲートの忠実度が99.90%とトップレベルにあることを確認した。
ダブルトランズモンカプラは、超伝導量子コンピュータの性能を左右する「可変結合器」の一種である。従来の可変結合器に比べ、「不要な残留結合を小さく抑えられる」ことや、「高速かつ高精度な2量子ビットゲートを実現できる」ことを、理論上で確認している。
東芝が考案したダブルトランズモンカプラは、トランズモン型超伝導量子ビットを2つ含む構成となっている。周波数が大きく異なる2つの「周波数固定トランズモン量子ビット」に対し、結合のオフと高速な2量子ビットゲート操作を両立させることができる。
ただ、この方式を実現するには、ゲート操作の時間に比べ、十分に長いコヒーレンス時間が必要となる。このためには、実際の形状や用いる超伝導材料、周辺回路設計、作製プロセスなどを工夫しなければならない。また、ゲート操作を高速に実行させるには、量子ビット間の結合強度を大きくする必要があるという。
研究グループは今回、ダブルトランズモンカプラで結合された2つの周波数固定トランズモン量子ビットの回路を作製し、その特性を調べた。この結果、コヒーレンス時間は量子ビットQ1のT1が230マイクロ秒、T2が360マイクロ秒となった。量子ビットQ2のT1は210マイクロ秒、T2が130マイクロ秒を達成した。また、外部磁束を調整することで、結合強度を最大約80MHzまで大きくすることができ、48ナノ秒という短いゲート時間を実現した。
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