伝送容量50倍、455Tbpsの空間多重長距離光伝送に成功:陸上フィールド環境で実証(1/2 ページ)
日本電信電話(NTT)は、外乱の影響を受ける陸上フィールド環境での実験において、最大455Tbps(テラビット/秒)の空間多重長距離光伝送に成功した。この伝送容量は、現行システムの50倍以上となる。また、伝送距離が1000kmを超える場合でも、大容量伝送が可能なことを実証した。
伝送距離が1000kmを超える場合でも大容量伝送が可能に
日本電信電話(NTT)は2024年12月、外乱の影響を受ける陸上フィールド環境での実験において、最大455Tbps(テラビット/秒)の空間多重長距離光伝送に成功したと発表した。この伝送容量は、現行システムの50倍以上となる。また、伝送距離が1000kmを超える場合でも、大容量伝送が可能なことを実証した。
陸上光伝送システムでは、大容量長距離伝送の実現に向け、「統合型マルチコアファイバー」が注目されている。既存の光ファイバーと同じ細さ(外径0.125mm)を維持したまま、空間チャネル数を10以上に拡張できるからだ。同様のマルチモードファイバーと比較しても、伝搬遅延ばらつきを低減できるなどの特長がある
ただ、光ファイバーケーブル内の信号伝搬環境は、風雨などの外乱によって変動することがある。このため、フィールド環境でも安定した大容量伝送が可能かどうかを検証する必要がある。ところが、結合型マルチコアファイバーを用いた伝送実験はこれまで、主に実験室環境で行われてきた。
そこで今回、光ファイバーケーブル内の信号伝搬環境が時々刻々と変動するフィールド環境を構築し、安定的な大容量伝送の検証を行った。具体的には、NTT横須賀R&Dセンター敷地内に、200心ケーブルの一部に実装した12結合コアファイバーケーブルを敷設した。ケーブルは全長4.86kmで、その大部分は地下の「とう道区間」に敷設した。約0.2kmは地上の電柱間にケーブルを架けた「空中配線区間」とした。
また、フィールド検証環境内のマルチコアファイバー間を直接接続するために、住友電気工業のファイバー融着技術や、千葉工業大学のコネクター技術を適用した。これにより、接続点当たりの光損失を、従来のシングルモードファイバー同士の接続と同等水準に抑えた。空間チャネル間の損失ばらつきも少ないという。実験では、ケーブル内のファイバー11本を折り返し接続し、一周53.5kmのフィールド環境周回伝送評価系を構成した。
受信機側で行うデジタル信号処理としては、MIMO信号処理技術を適用した。これにより、1000km超の長距離伝送によってひずんだ受信信号を、送信信号へと復調した。信号フォーマットは、シンボルレート140ギガボーの偏波多重PCS-36QAM信号を採用した。
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