ニュース
伝送容量50倍、455Tbpsの空間多重長距離光伝送に成功:陸上フィールド環境で実証(2/2 ページ)
日本電信電話(NTT)は、外乱の影響を受ける陸上フィールド環境での実験において、最大455Tbps(テラビット/秒)の空間多重長距離光伝送に成功した。この伝送容量は、現行システムの50倍以上となる。また、伝送距離が1000kmを超える場合でも、大容量伝送が可能なことを実証した。
1000km超の伝送距離で、389Tbpsの総伝送容量を達成
NTTが開発した回路技術とデジタル信号処理技術を組み合わせることで、一波長チャネル当たり最大15.0テラビット/秒の大容量チャネルを構成した。今回の伝送実験では12コア多重と同時に、C帯全域の4.65THz帯域にわたって31波長チャネルの波長分割多重を組み合わせたことで大容量化を実現した。
実験では伝搬遅延ばらつきと光損失ばらつきを1時間にわたり測定し、安定していることを確認した。各波長チャネル信号の伝送後における信号品質も評価した。この結果、伝送距離53.5kmにおいて、各波長信号がそれぞれ14テラビット/秒以上の伝送容量を持ち、総伝送容量は455テラビット/秒に達することが分かった。この値は、現行陸上システムの50倍以上の伝送容量に相当し、陸上フィールド環境における空間分割多重伝送実験では過去最大となる。
さらに、伝送距離1017kmにおいても、それぞれ12テラビット/秒容量以上の波長信号により、総伝送容量389テラビット/秒の容量を達成した。これは東名阪の区間をカバーできる距離だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 波長を変換しながら3000kmの長距離伝送、NTTとNEC
NTTとNECは、波長を変換しながら長距離光伝送を可能にする技術を確立した。開発した技術を活用すれば、「IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)」の適用エリアを拡大できるという。 - 無線FE、300GHz帯で160Gbpsのデータ伝送に成功
NTTは、300GHz帯の半導体回路を用いた小型無線フロントエンド(FE)を開発し、160Gビット/秒のデータ伝送に成功した。6G(第6世代移動通信)で超高速通信を実現するための重要なデバイスとなる。 - 100Tbps超の伝送容量で800kmの光増幅中継伝送に成功
NTTは2024年9月3日、既存のファイバー上で集中光増幅器のみを用いて、毎秒100テラビット(100Tbps)を超える伝送容量で800km以上の長距離光増幅中継伝送に「世界で初めて」(同社)成功したと発表した。新たに開発した超長波長帯一括変換技術を用いて実現したものだ。 - 超短グラフェンプラズモン波束を電気的に発生、制御
NTTは、東京大学や物質・材料研究機構(NIMS)と共同で、パルス幅が1.2ピコ秒と極めて短いグラフェンプラズモン波束を電気的に発生させ、伝搬制御することに成功した。これを利用して、テラヘルツ(THz)電気信号の位相や振幅が変調できることを実証した。 - トポロジーの原理を活用したGHz超音波回路を開発
NTTと岡山大学は、トポロジーの原理を利用した「ギガヘルツ(GHz)超音波回路」を開発した。スマートフォンなどの無線通信端末に用いる高周波フィルターの小型化や高性能化が可能になるという。 - 基板の表面処理で2次元半導体の電荷制御に成功
東北大学とNTT物性科学基礎研究所は、表面処理を施した3次元半導体に2次元半導体を積層することで、2次元半導体から3次元半導体への電子移動効率を向上させるとともに、2次元半導体の電荷状態を制御することに成功した。