群雄割拠のチップレット 「理にかなった」戦略をとっているのは?:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(88)(3/4 ページ)
2024年、「チップレット」というキーワードがメディアで何度も取り上げられた。ただ、当然だかチップレット化が全てではなく、ベストなソリューションというわけでもない。今回は、2024年に発売された製品/プロセッサを分解し、チップレットが理にかなった方法で適用されているかを考察してみたい。
「賢いチップレット」と「その場しのぎのチップレット」
図4は2024年にIntelが発売したPC向けプロセッサの新シリーズ「Core Ultra」の様子である。IntelはCore Ultraを3ファミリー(Meteor Lake、Luner Lake、Arrow Lake、いずれも開発コードネーム)立て続けに発売し、いずれもシリコンを組み合わせるチップレット構成になっている。3ファミリーともにPC向けなので、共通シリコンが多いものだと予想された。
表2はIntel Core Ultra 3ファミリーのシリコン種をまとめたものである。機能トランジスタのないFillerシリコン(隙間埋め)は表には加えていない。Intelは3ファミリーを作るために、トータルで12種類のシリコンを開発している。異なるプロセス(3nm/5nm/6nm)のTSMC製の機能チップもあれば、配線と電源のためのシリコンインターポーザー、Intel自社ファブ製もある。チップレットの名前通りの“寄せ集め”となっている。共通化されたシリコンは表中の水色のわずか1個だけ。チップレットには2種存在する。“Smartチップレット(賢い)”と“Stopgapチップレット(その場しのぎ)”だ。Intel Core Ultraは現時点ではStopgapチップレットと言わざるを得ない。
図5は2023年のIntel Coreシリーズ最後のチップである「Intel Core i9プロセッサー 14900K」とArrow Lake、そしてAMDが2024年第3四半期に販売を開始した「Ryzen 9000Xシリーズ」の比較である。1シリコンで製造された14900Kに対してチップレット化されたArrow Lakeは下敷きとなるシリコンインターポーザーの面積も加算されるのでシリコン面積は2倍以上を必要とするものになっている。シリコン面積≒コストなので、面積2倍はシリコン消費量の観点では進化ではなく退化と見えてしまう。一方AMDはSmartチップレットだ。CPUシリコンだけを増減しハイエンドからローエンドまでチップレットで作り分けているからだ。
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