GPUの登場、チップレットの考案……半導体業界は2006年に動いた:現在に続く技術革新の始まり(1/3 ページ)
「ムーアの法則」の減速、GPUやチップレット技術の成長、クラウドコンピューティングの台頭など、現在の半導体業界の変化を推進する要素は、偶然ながら多くが2006年にそのきっかけを持つ。2006年に開発された技術や同年の出来事を振り返る。
半導体市場は数年前とは大きく様変わりした。クラウドサービスプロバイダーは、カスタムシリコンと、パートナーとの共同設計を求めている。長らく未来の技術として議論されてきたチップレットと3次元(3D)デバイスは、既に市場の成長分野となっている。「ムーアの法則」はどうだろうか。半導体の性能向上はまだ維持されてはいるが、それは単なる微細化とは異なる手段によるものだ。
全くの偶然ではあるが、こうした変化を推進する力の多くは、2006年という同じ年に生まれたものだ。
「微細化の魔法」が停滞
ムーアの法則は減速したとはいえ、まだ存続している。半導体企業は、ある程度予測可能なペースでトランジスタのサイズを縮小し続けることができている。
かつてはMOSFETのサイズを小さくするほど高速かつ低消費電力になるという法則、「デナードスケーリング(比例縮小則)」が成立していたため、チップ設計者は微細化によってクロック速度の向上や消費電力の削減を実現できた。実際に、PCメーカーや携帯電話設計者、ソフトウェア開発者は、ハードウェアの着実な進歩を予測できるようになった。
しかし2006年、デナードスケーリングは事実上停止した。そのため、回し車を回転させ続けるための新しい技術を早急に見つける必要が生じた。
2000年代半ばになると、トランジスタ数が増加し続ける一方で周波数とシングルスレッドのパフォーマンスは横ばいになった[クリックで拡大] 出所:Karl Rupp、Microprocessor Trend Data
NVIDIAが初のGPUを発表
高性能コンピューティング(HPC)をターゲットにしたGPUが誕生したのも2006年だ。2006年11月、NVIDIAはHPCおよび汎用コンピューティングをターゲットとした同社初のGPUである「G80 GPU」を発表した。この90nm並列コプロセッサは、当時としては驚異的な6億8600万個のトランジスタを搭載していた。
NVIDIAはさらに、GPUでのプログラミングプロセスを簡素化するために開発プラットフォーム「CUDA」も生み出した。GPUを搭載したスーパーコンピュータは2012年までにコンピュータ性能のランキングであるTOP500の首位に躍り出た。現在、同リストに掲載されているシステムの約90%がGPUを搭載している。
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