現在の半導体製造は「非効率的」 AI活用でどう変われるか:米でカンファレンス開催(3/3 ページ)
AIが半導体製造も変えようとしている。半導体設計の分野では既にAIがかなり活用されているが、その波が半導体製造にも来ている。米国で開催された「AI Executive Conference」では、IntelとAnalog Devicesが、AIを用いて工場の生産性を向上させた事例を紹介した。
ここでも人材難が課題に
この日最後のトピックとなったのは、人材開発だ。PDFの最高技術責任者(CTO)であり、かつて米カーネギーメロン大学の電気・コンピュータ工学部教授だった経歴を持つAndrzej Strojwas氏は、先に登壇した数人の講演者たちが、分析業務関連の人材にもっと優れた教育を行う必要があると語っていたことについて取り上げた。
現在状況は変化しつつある。この業界で働くことに再び関心が寄せられている一方で、卒業するエンジニアたちは製造データ分析に関するトレーニングを受けておらず、製造データの熟練エンジニアたちは退職してしまうのだ。
この業界がオンショア製造を拡大していくためには、新たな熟練人材が必要である。課題となっているのは、エンジニアに必要なツールを提供し、トレーニングを実施することだ。Strojwas氏は、「業界にはそのためのインフラがある。コンピュータサイエンスやコンピュータエンジニアリングを専門とする大学では、AppleやGoogleなどの企業のおかげで半導体設計が復活しつつある。しかし、大学で半導体製造に関連する教育が行われている場合、いまだ従来型の機器レベルの実験や一部のソフトウェアツール関連にとどまっているという状況だ」と主張する。
しかし、状況は変化し始めている。カーネギーメロン大学がPDFとIntelのサポートを受けて新たに設置したコースでは、新しい種類の教育が行われている。そのクラスでは、学生に実際のシナリオに基づいたプロジェクトを行う機会を提供し、半導体製造/半導体業界の状況を理解できるよう十分なトレーニングを実施するという。具体的には、製造プロセスのデジタルツインを使用して、さまざまな分析手法を学び、実験する。
こうしたクラスは人気があり、クラスの規模が拡大された。他の大学への展開も計画中だという。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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