25年のファウンドリー業界は20%成長 TSMCの最先端ノードは90%稼働:成長速度は鈍化(2/2 ページ)
市場調査会社のCounterpoint Researchによると、2025年の半導体ファウンドリー業界の成長率は20%に達する見込みだという。主にTSMCや、AIの波に乗った小規模なライバル企業がけん引役だ。
Intelは先端パッケージングに投資を継続
先端パッケージングに注力するファウンドリーは、TSMCだけではない。
Intelも、特に2.n次元(2.nD)パッケージング技術「EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)」や3次元(3次元)パッケージング技術「Foveros」などで進歩を遂げている。Foverosは主に「Meteor Lake」など、チップレットベースのアーキテクチャを搭載するIntel製品で使われている。
Chang氏は「半導体設計がますます複雑化していることを踏まえると、Intelは、自社製品のロードマップをサポートしたり外部顧客を引き付けるためにも、先端パッケージングの研究開発への投資を継続していくとみられる」としている。
車載半導体は低空飛行
Counterpointの予測では、2025年前半も車載半導体の在庫調整が続き、回復が遅れる見込みだという。Infineon TechnologiesやNXP Semiconductorsなどのグローバルな垂直統合型デバイスメーカーの在庫水準が高く、成熟ノードファウンドリーへの発注が減少し、成熟ノードの稼働率がさらに低下する可能性がある。
「電気自動車(EV)や先進運転支援システム(ADAS)などのトレンドによって自動車1台当たりの半導体搭載数が増加しているのは事実だが、車載半導体市場は現在、調整局面にある。自動車市場はここ数四半期にわたって低迷していて、特にマクロ経済情勢に敏感な分野であるため、金利の上昇によって需要がさらに減退している」(Chang氏)
Counterpointによると、ファウンドリー業界は2025年以降、持続的成長を遂げていく見込みだが、2025〜2028年の年平均成長率(CAGR)は13〜15%に鈍化する見込みだという。
Counterpointはレポートの中で「ファウンドリー市場の長期的な拡大は、3/2nm以降の最先端ノードの進歩や、CoWoSや3D統合といった先進パッケージング技術の採用が加速することによって支えられていく見込みだ。これらのイノベーションは、高性能コンピューティング(HPC)/AIアプリケーションの需要増大による後押しを受け、業界にとっては引き続き、この先3〜5年間の成長エンジンとなるだろう。TSMCは、今後もリーダーシップを維持して業界のトレンドを形成し、技術的優位性を十分に活用していくとみられる」としている。
TSMCは、ファウンドリー事業全体で60%超のシェアを確保していて、Samsung Electronics(以下、Samsung)とIntelがその後に続く。TSMCの2024年の設備投資額は約298億米ドルだったが、2025年には380億〜420億米ドルに増加する見込みだという。
2025年、ファウンドリーの生産能力は10%成長
半導体業界団体のSEMIによれば、半導体装置を主に購入するのは引き続きファウンドリー各社になりそうだという。2025年のファウンドリー分野の年間生産能力は前年から10.9%増加し、ウエハー生産能力は2024年の月産1130万から、2025年には1260万枚を記録する見込みだ。
またSEMIによると、メモリ分野の成長率は、2024年には3.5%と控えめだったが、2025年には2.9%とさらに減速する見込みだという。生成AI需要が旺盛で、メモリ市場も大きな変化の途中だ。広帯域メモリ(HBM)の需要が急増していて、DRAMやNANDフラッシュメモリと比較し、その成長トレンドに乖離が生じている。
SK hynixは2024年、HBMをはじめとする先進メモリチップの売り上げが好調だったことから、年間営業利益で初めてSamsungを上回った。SK hynixはNVIDIAにHBMを供給している唯一の企業だ。メモリのライバルであるSamsungとMicron TechnologyもHBMの市場投入に向け開発に取り組んでいる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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