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TSMCが米国に1000億ドル追加投資 「政権の威力」とトランプ氏IntelとSamsungを引き離す(1/3 ページ)

TSMCは、米国でのAIチップ生産を開始すべく、1000億米ドルの追加投資を行う予定だという。これによって、ドナルド・トランプ米大統領が台湾企業からの輸入品に課すと脅かしていた最大50%の関税を、辛うじて回避することになる。

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 TSMCは、米国でのAIチップ生産を開始すべく、1000億米ドルの追加投資を行う予定だという。これによって、ドナルド・トランプ米大統領が台湾企業からの輸入品に課すと脅かしていた最大50%の関税を、辛うじて回避することになる。

 同社は「この投資によって米国アリゾナ州フェニックス近郊に、3つの新しい半導体製造工場と2つの先進パッケージング施設、1つの研究開発センターを建設する予定だ。これは、単独企業による海外直接投資としては米国史上最大規模のプロジェクトとなる」と述べている。ただし同社は、この新たな投資の期間やプロセス技術ロードマップなどについては詳細を明かしていない。

 同プロジェクトは、TSMCがAppleやNVIDIA、AMD、Broadcom、Qualcommなどの大手AI/テック企業を含む顧客企業のために米国内の生産を支援することを明示している。米国EE Timesが取材したアナリストによると、TSMCが拡大を遂げる一方、ライバル企業であるIntelやSamsung Electronics(以下、Samsung)は米国での生産が低迷していて、「2nmノードで世界先端チップ製造の最大40%のシェアを獲得する」という米国の目標が崩れつつあるという。

 トランプ大統領は第1次政権時の2020年に、TSMCによるアリゾナ州への初期投資を獲得した。続くバイデン政権が策定した米CHIPS法(CHIPS and Science Act)では、TSMCのアリゾナ工場に60億米ドルの資金を提供している。そして現在、米国では製造コストが高いなどさまざまな問題があるにもかかわらず、TSMCはアリゾナ工場への投資を当初の予定からほぼ倍増させている。

 TSMCのCEOであるC.C. Wei氏は声明の中で「今やわれわれのビジョンは現実のものとなった。アリゾナ州の最初の工場が成功し、必要な政府支援や顧客との強力なパートナーシップも得られ、米国半導体製造への投資をさらに1000億米ドル追加することで投資総額は1650億米ドルに達する見込みだ」と述べている。

TSMC CEOのC.C. Wei氏(左)とドナルド・トランプ米大統領(中央)
TSMC CEOのC.C. Wei氏(左)とドナルド・トランプ米大統領(中央)[クリックで拡大] 出所:C-SPAN

TSMCの投資拡大は「トランプ政権の威力」とトランプ氏

 TSMCは「アリゾナ工場は、2024年後半に製造を開始していて、敷地面積は1100エーカー(約445万m2)、従業員数は3000人を超える。今回の投資拡大は、米国半導体エコシステムを強化していく上で重要な役割を担う。当社にとって米国では初となる先進パッケージング投資によって、米国のAIサプライチェーンを完成させる予定だ」と述べる。

 トランプ大統領は、2025年3月にホワイトハウスで行われたイベントにWei氏と共に登場し、「半導体は21世紀の経済の骨格を形成する。AIから自動車、高度な製造業に至るまで、あらゆるものを動かす半導体は経済に欠かせない。米国は、必要な半導体を製造できる能力を持たなければならない」と述べた。

 さらにトランプ大統領は「台湾は、半導体製造市場をほぼ独占している。これは経済安全保障の問題であり、われわれにとっては国家安全保障の問題でもある」とも述べた。

 米国商務長官のHoward Lutnick氏は、同イベントにおいて「TSMCがバイデン政権下で60億米ドルの補助金を受けたことで、650億米ドルの投資が促進された」と述べている。

 「米国はTSMCに、米国での建設費全体の10%の資金を提供したのだ。そして今、われわれはトランプ政権の威力を目の当たりにしている。世界最大の半導体メーカーであるTSMCが米国に1000億米ドルを投じようとしているのだ。この背景にあるのは、TSMCが米国に来ることができるのは関税を回避できるからだという事実である」(Lutnick氏)

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