検索
特集

TSMCが米国に1000億ドル追加投資 「政権の威力」とトランプ氏IntelとSamsungを引き離す(2/3 ページ)

TSMCは、米国でのAIチップ生産を開始すべく、1000億米ドルの追加投資を行う予定だという。これによって、ドナルド・トランプ米大統領が台湾企業からの輸入品に課すと脅かしていた最大50%の関税を、辛うじて回避することになる。

Share
Tweet
LINE
Hatena

台湾依存の軽減を目指す米国

 トランプ大統領は「TSMCが米国工場に投資しなければ、TSMCは台湾国内で工場を建設して米国に輸出することになるため、いずれ25%や30%、50%といった関税を払わなければならない。関税率は上昇していく一方だ。しかし、米国で製造すれば関税はかからないため、TSMCは競争においてはるか先を進むことができる」とし、「米国はTSMCの投資によって、最先端チップの世界市場シェアを大きく拡大していくだろう」と強調する。

 「米国の世界市場シェアは非常に小さく、ほとんどないに等しい。かつてはIntelが大きなシェアを確保していたが、ごくわずかになってしまった。今回の取引と、現在進めている他の数件のプロジェクトによって、市場全体の約40%を確保できるようになるだろう」(トランプ大統領)

 トランプ大統領は「TSMCの米国への投資拡大で、台湾に最先端チップの90%超を依存するというリスクを回避することができる」とした。台湾は、米中間でし烈な競争が繰り広げられる技術戦争の中心にある。

 同大統領は、イベントにおいて記者団に対し「少なくとも、米国は半導体という非常に重要なビジネスにおいて地位を確保することになる。もし台湾に何かが起これば、大きな影響が及ぶことになるだろう」と述べた。

後れを取るIntelとSamsung

 TSMCが拡大を遂げる一方、半導体ファウンドリー分野のライバルたちは、CHIPS法による数十億米ドル規模の刺激資金があるにもかかわらず、米国への投資を減速させている。Samsungはテキサス工場の建設を延期し、Intelはオハイオ州における「シリコンハートランド(Silicon Heartland)」プロジェクトの建設を2030年〜2031年まで延期している。米国政府は、性能マイルストーンを達成できなかったメーカーからCHIPS法の補助金を回収する場合があることを定めている。

 コンサルティング会社DGAの中国および技術政策担当シニアバイスプレジデントであるPaul Triolo氏はEE Timesに対して「TSMCは、テクノロジーとファウンドリーの明確なリーダーであるため、米国で事業を拡大すれば顧客を確保できる力を持っている。一方、SamsungとIntelの両社は、顧客獲得に苦戦していて、CHIPS法を通じた米国施設の資金調達のための設備投資マイルストーンの達成において課題に直面している」と語った。

 SemiAnalysisのアナリストを務めるJeff Koch氏は「IntelとSamsungが投資を減速しているのは、成長を支える顧客がいないためだ」とEE Timesに語っている。

 「そうした顧客はみなTSMCを利用している。先進チップの需要は高まっていて、TSMCはそれに応えるために投資している」(Koch氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る