「RZ/V2」世代最後の切り札、ルネサスがビジョンAI用の主力MPUを初公開:性能と『熱くならなさ』を実演(2/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスが、同社独自のAIアクセラレーター技術「DRP-AI」を搭載するビジョンAI用MPUの新製品でメインストリーム製品となる「RZ/V2」を発表し、ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2025」で初公開した。
主力として性能は十分、価格はハイエンドの半分
RZ/V2Nの主な特長は下図の通りだ。RZ/V2Nは、RZ/V2Hと同様にArmの「Cortex-A55」を4コアと「Cortex-M33」を1コア搭載。高速復帰をサポートした低消費電力モードにも対応している。AI性能についても、RZ/V2Hで初採用した最新世代のDRP-AI「DRP-AI3」を搭載し、10TOPS/Wを実現している。なお、DRP-AI3は、DRPとMAC(積和演算)ユニットで構成されるが、RZ/V2NではMACユニットのサイズをRZ/V2Hの半分に削減した。これによってAI性能はSparseモデル(枝刈り適用)で15TOPS、枝刈りしないDenseモデルでは最大4TOPSとなっている。
また、4Kの画像信号処理が可能なArmの「Mali-C55」ISPを搭載。さらにMIPIカメラインタフェースを2チャンネル搭載し、2つのカメラを接続可能となっている。このほかPCIe Gen3やUSB 3.2、ギガビットイーサネットなどの高速インタフェースも備えている。
RZ/V2H(およびローエンド品)との機能の違いを示したのが下図だ。上述の通り、DRP-AI3のMACユニットのサイズをRZ/V2Hの半分にし、AI性能の最大値が異なる。LPDDR4/4XメモリインタフェースもRZ/V2Hでは32ビット×2チャンネルだったがRZ/V2Nは1チャンネルに削減。また、メインCPUでは「Cortex-R8」2コアを搭載していないほか、カメラ接続も2つまでとなった。
このほか、RZ/V2HではDRP-AI3とは別にもう1つのDRPを搭載し、画像処理ライブラリである「OpenCV」の処理を高速化するOpenCVアクセラレーターとして使用。DRP-AI3のAI処理と並行して、従来の画像処理アルゴリズムを高速化できていた。今回のRZ/V2Nは、このもう1つのDRPは搭載していないため、OpenCVアクセラレーターは、AI処理とは排他的に動作することになる(DRP-AI3によるAI処理か、DRP-AI3内のDRPを用いたOpenCVアクセラレーターの処理のどちらか一方を選ぶ必要がある)
RZ/V2Nではこうした機能の違いがある一方で、LSIのパッケージ面積が15mm角と、RZ/V2Hより38%小型化し、実装に必要な面積を縮小した。また、価格についてもRZ/V2Hの半額に抑えているといい「高いAI性能と手頃な価格で、ミッドレンジAI市場のアプリケーションに最適だ」(同社)している。
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