「RZ/V2」世代最後の切り札、ルネサスがビジョンAI用の主力MPUを初公開:性能と『熱くならなさ』を実演(3/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスが、同社独自のAIアクセラレーター技術「DRP-AI」を搭載するビジョンAI用MPUの新製品でメインストリーム製品となる「RZ/V2」を発表し、ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2025」で初公開した。
RZ/V2NのAI推論性能
RZ/V2NのAI推論性能について、RZ/V2Mと比較したのが下図だ。ResNet-50ではDenseモデルで4倍、Sparseモデル(90%)で14倍と大きく性能が向上したとしている。
ルネサスはRZ/V2Nの発表に合わせ、学習済みAIモデルをDRP-AIで実行可能な形式に変換するツールである「DRP-AI TVM」をアップデート。単眼カメラでの深度推定や新しいAIタスクへの対応、さらにはビジョン系トランスフォーマーモデルにも対応する。また、50種類以上のユースケースに対応する各種AIアプリケーションを「AI Applications and AI SDK(GitHub)」で提供。これによって「AIに関する深い知見が無いユーザーでも、AIアプリケーションを早期に評価/開発でき、市場投入までの時間を短縮できる」としている。
ルネサスはRZ/V2Nのほとんどの機能を評価できる開発キットもRZ/V2N発売と同時(2025年3月19日)から注文可能にする予定だ。さらにパートナー企業によるSOM(System on Module)やシングルボードコンピュータ(SBC)も複数社が発売予定だ。
embedded world 2025で展示、「熱くならなさ」をサーモカメラで実演
ルネサスは今回、embedded world 2025の会場でRZ/V2Nの実物およびデモを初公開した。RZ/V2Nが2台のカメラから画像を取得し、2系統のAIおよびビデオエンコーディングを低電力で実現する様子を見せるデモなどを実施。このデモでは、ファンレスが可能な消費電力2.6Wを達成(実測値)し「顧客の機器を小型化し、熱対策不要なソリューションとして提供できる」としていて、実際にサーマルカメラで基板を撮影し熱対策不要で温度は50℃以下に収まっている様子も示していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
機器開発を効率化、ルネサスがプラットフォーム発表
ルネサス エレクトロニクスとAltiumは、ソフトウェア定義型製品の開発を支援するプラットフォーム「Renesas 365 Powered by Altium」を発表した。2026年初頭より提供を始める。ルネサス、24年通期は減収減益 「25年は将来のための取り組みに集中」
ルネサス エレクトロニクスの2024年12月期通期業績(Non-GAAPベース)は、売上高が前年比8.2%減の1兆3485億円、売り上げ総利益率が同0.9ポイント減の56.1%だった。営業利益は同1037億円減の3979億円で、営業利益率は同4.6ポイント減の29.5%だった。当期純利益は同725億円減の3604億円だった。AI性能2000TOPSのSDV用SoC、ルネサスとHondaが開発へ
本田技研工業とルネサス エレクトロニクスが、SDV用の高性能SoCの開発契約を締結した。ルネサスの車載SoC「R-Car」第5世代品である「R-Car X5」シリーズにAI(人工知能)アクセラレーターをマルチダイチップレット技術によって追加、AI性能2000TOPS、電力効率20TOPS/Wを目指す。国産AI SBC「Kakip」(カキピー)のロボット制御デモを発見
「基板の小ささを生かしてロボコンなどでも使ってもらいたい」とのことでした。「世界初」マイコン1個で8機能を制御、E-Axleの動作デモ ルネサス
ルネサス エレクトロニクスは欧州最大規模のエレクトロニクス展示会「electronica 2024」に出展し、8つの機能を1個のマイコンで制御する電気自動車(EV)向けE-AxleのPoC(proof of concept)機を展示。実際の動作デモを行った。PoCはニデックと共同で開発したものだ。ヒートシンクいらずのエッジAI 画像処理とロボット制御を同時に実行
アヴネットは「EdgeTech+ 2024」に出展し、ルネサス エレクトロニクスの「RZ/V2H」を用いたエッジAIのデモや自社ブランドであるTria Technologiesのコンピューティングモジュールを紹介した。国産AI SBC「Kakip(カキピー)」が24年10月に発売へ
ユリ電気商会は、ルネサス エレクトロニクスのビジョンAI向けMPU「RZ/V2H」を搭載したSBC「Kakip(カキピー)」を2024年10月7日に発売する。価格は5万9800円(税込み)。当面は8GB(ギガバイト)版のみ生産予定で、「2GB、4GB版はマーケットからの要望が多ければ対応可能」という。