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「M4 Pro/M4 Max」を解析 IPを最大限に生かすAppleのモノづくりこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(90)(2/3 ページ)

2025年も精力的に新製品を発表しているApple。今回は、2024年から2025年にかけて発売された「Mac mini」や「Mac Studio」を取り上げ、それらに搭載されているプロセッサ「M4 Pro」「M4 Max」を報告する。

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プロセッサと電源の開発を一元化

 Appleは、2018年に英Dialog Semiconductor(現ルネサス エレクトロニクス)の電源IC事業を買収し、以降電源ICをプロセッサと対で全ての製品(iPhoneやApple Watch、Air Pods)で活用している。よりキメの細かい電源制御を行うことで電力性能や演算性能を向上させているわけだ。トランジスタは電圧を上げると高速化するが、上げ過ぎるとセットアップ問題を起こしてしまう。プロセッサ開発と電源開発を一元化することで、整合性の高い電源管理ができる。QualcommやMediaTekも同様の開発を行っている。さらにAppleは、2024年11月の製品にThunderbolt 5インタフェースを搭載した。Thunderbolt 5は従来のThunderbolt 4の2倍以上の伝送速度を実現できるものになっている。Thunderbolt 4からAppleは独自開発のインタフェースチップを活用しており、2024年11月のMac mini、MacBook ProではApple製Thunderbolt 5が端子数だけ搭載されている。出入り口から電源、メモリ制御、プロセッサまでApple製だ。

 図4は2023年2月の前モデルMac miniの基板およびM2 Pro、2024年の新Mac miniとM4 Proの様子である。基板面積はおおむね3分の2になっているが、プロセッサのパッケージサイズは同じだ。M2 Proでは5nmを適用していたが、M4 Proでは3nm製造なのでプロセッサが小さくなったから、基板が小型化できたわけではない。Mac miniを小型化できたのは、基板全面を設計し直したからだ。電源ICの最適化、プロセッサの低電圧化などによって基板全体を小型化できる半導体の進化が背景にあることは間違いない。Appleは常に半導体特性を見て基板構成も変えてきているわけだ。

図4:2023年Mac miniと2024年Mac mini
図4:2023年Mac miniと2024年Mac mini[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図5は2024年11月に発売されたM4 Max搭載MacBook Proの様子である。2023年11月に発売されたM3 Max搭載MacBook Proの後継機種で、内部構成、構造、基板サイズなどは2023年モデルとほぼ同じものである。大きな変更点はプロセッサがM3 MaxからM4 Maxに置き換わったことと、インタフェースがThunderbolt 4からThunderbolt 5になったことである。

図5:2024年11月発売の「Apple MacBook Pro」
図5:2024年11月発売の「Apple MacBook Pro」[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図6はMacBook Proの基板のプロセッサ裏面である。電源を安定化させるためのセラミックコンデンサーと電源ICが5個設置されている(断面解析なども実施済み)。チップシリコンにはAppleチップの型名も刻印されている。Apple独自開発のシリコンだ。Appleは電源制御ICだけでなく、iPhoneなどで活用されるシリコンキャパシターも独自開発を行っている。Appleのチップ開発は機能と性能を一元化しているわけだ。

図6:Apple M4 Maxの基板裏面の電源管理IC(PMIC)
図6:Apple M4 Maxの基板裏面の電源管理IC(PMIC)[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図7は2023年のM3 Max搭載MacBook Proと、2024年のM4 Max搭載MacBook Proのヒートシンクの比較である。M3 Maxではプロセッサ部だけであったヒートシンクの重なり部が、M4 Maxではユニファイドメモリも覆う形状に変わっている。メモリも含めた発熱対策が施されるようになっているのだ。Apple製品は常時マイナーチェンジも進めている。

図7:2023年と2024年のMacBook Proの比較
図7:2023年と2024年のMacBook Proの比較[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

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