「M4 Pro/M4 Max」を解析 IPを最大限に生かすAppleのモノづくり:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(90)(3/3 ページ)
2025年も精力的に新製品を発表しているApple。今回は、2024年から2025年にかけて発売された「Mac mini」や「Mac Studio」を取り上げ、それらに搭載されているプロセッサ「M4 Pro」「M4 Max」を報告する。
IPを最大限に生かすAppleのモノづくり
図8はM4 ProとM4 Maxのチップ開封の様子である(配線層剥離の詳細内部写真は省略)。M4 ProはPCPU(Performance CPU)10コア、ECPU(Efficiency CPU)4コアとアナウンスされているが、実シリコンはPCPU12コアとなっている。M4 Maxの12コアと同数だ。シリコンの3分の2は完全に一致したものになっている。M4 Pro + GPU20コア = M4 Maxだ。設計資産を共通化することで、開発効率を上げているわけだ。CPUやNPUを共通化すれば、テストも流用できる。M4 Maxの上部の構造は非掲載とさせていただいたが、近日解析を行うM3 Ultraと合わせて、後日取り上げる予定である。Appleはハイミドルエントリーの3種のシリコンをMシリーズでは常に開発するが、社内IP(Intellectual Property)の流用を最大化することで、スケーラブルな構造を作り上げている。
表1は3nm第2世代 TSMC N3Eプロセスを活用する2024〜25年のAppleチップのPCPUについて外観を比較したものである。A18からM4 Maxまで、PCPUは同じものとなっている。コア数が異なるだけだ。GPU、NPU、ECPUも同様となっている。1コアを丁寧に作り、個数でスケーラビリティを作り出しているわけだ。
次回はiPhone 16eやMac Studioを取り上げたい。解析が間に合わない場合は、次々回になる可能性もあるのでご了承いただきたい。2025年前半は、NVIDIAやAMDの新GPU解析などもあって、筆者はオーバーワーク気味です……。
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