動く物体を高精度で深度測定、処理も内蔵 onsemi初のiToFセンサー:「既存iToFセンサーの限界を克服」(2/2 ページ)
onsemiが、高精度の長距離測定と高速移動物体の3Dイメージングを実現する産業向けiToFセンサーを開発し、ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2025」において公開した。今回、onsemiが「既存のiToFセンサーの限界を克服した」とする同製品について、現地で担当者から話を聞いた。
深度測定距離を30mまで拡大
もう1つの大きな課題として挙げたのが測定距離の短さだ。現在の一般的なiToFセンサーの屋内測定範囲は10m未満という。これは単一の変調周波数に基づいていることなどが要因といい、今回onsemiはデュアル変調周波数を導入。結果として約0.5%の精度で最大30mまで屋内測定距離を延ばしたとしている(屋外でも10m以上に対応できると説明)
また、グローバルシャッター採用によって、全てのセンサーピクセルをVCSELに整列させることで、他の光源や太陽などほかの赤外線源から発生するノイズを大幅に削減していることも強調している。
さらに、従来のiToFセンサーでは、深度処理に関して高価な外部メモリや高性能プロセッサが必要となっていたが、新製品では深度処理をオンボードに統合したことでこれらが不要となり、システムコスト削減が実現可能だとしている。
画像も同時に出力可能
このほか解像度についても、一般的に出回っているiToFセンサーのほとんどはVGA解像度で、そのため精度にも制限があり用途も限られていることから、onsemiは今回、3.5μmの裏面照射(BSI)ピクセルを採用し、解像度は1.2メガピクセル(1280x960)にまで高めている。
新製品では深度に加え、モノクロ画像も同時に出力が可能な点も特長だ。Harris氏は「多くの場合、それぞれ別のセンサーを用意して組み合わせる必要があったソリューションを、われわれの製品では1つで実現できる。これによって、工場自動化やマシンビジョン、ロボット工学などの分野のほか、3Dビデオ会議といった予想していなかった分野でも採用が検討されている」と語っていた。
会場で実施していたデモでは、ベルトコンベヤー上を高速で移動する対象の深度測定を、対象を停止することなくリアルタイムで実行している様子を紹介していた。
Hyperlux IDファミリーには、オンボード処理機能を備えたAF0130と、独自の深度アルゴリズムの統合を希望する顧客向けにオンボード処理機能のないAF0131の2製品を用意している。Harris氏は「既に主要顧客と連携していて、2025年中に製品が現場に導入されることを期待している」と語っていた。
また、自動車のインキャビンセンシングのデモも展示。こちらはパートナーであるSmart EyeのAIモニタリング技術と組み合わせ、乗客モニタリングや占有センサーとしての機能と同時に、モノクロ画像を出力をすることからドライバーの視線追跡も行っている。
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