「世界最小」ゴマ粒並みの32ビットMCUをTIが開発:1.6mm×0.861mm
Texas Instruments(TI)は2025年3月11日(米国時間)、「世界最小」(同社)という1.6mm×0.861mmサイズのArm Cortex-M0+ベースMCU「MSPM0C1104」を発表。ドイツで開催中の組み込み技術の展示会「embedded world 2025」(同月11〜13日)で実物を公開した。
Texas Instruments(TI)は2025年3月11日(米国時間)、「世界最小」(同社)という1.38mm2サイズのArm Cortex-M0+ベースMCU「MSPM0C1104」を発表。ドイツで開催中の組み込み技術の展示会「embedded world 2025」(同月11〜13日)で実物を公開した。8ボールのウエハーレベルチップスケールパッケージ(WCSP)は1.6mm×0.861mmとゴマ粒並みで、競合の最小サイズ品よりも38%小型だという。TIは、「設計者は性能を損なうことなく、医療用ウェアラブルやパーソナルエレクトロニクスなどのアプリケーションで基板スペースを最適化できる」としている。
TIは、Arm Cortex-M0+を搭載した低価格帯汎用マイコン「MSPM0」として、エントリーレベルの「MSPM0C」と低消費電力の「MSPM0L」、高性能の「MSPM0G」の3シリーズを展開している。今回発表したのは、このエントリーレベルの製品だ。
ワイヤレスイヤフォンやタッチペンなどの小型機器や医療用ウェアラブルといったアプリケーションでは、より小さな実装面積でより多くの機能を、低コストで実現することが求められ、設計者は基板面積を節約しながら機能を追加できる小型の集積部品をますます必要としているという。今回、TIは、こうした要望に対応する製品としてMSPM0C1104を開発。「機能の厳選およびコスト最適化の努力、そしてWCSPパッケージ技術の利点を活用」(同社)して、世界最小という1.38mm2サイズを実現したとしている。
MSPM0C1104はその超小型パッケージに、最大24MHz動作の32ビットArm Cortex-M0+コア、16Kバイトのフラッシュメモリ、1KバイトのSRAM、3チャンネルの12ビットA-Dコンバーター(ADC)、3つのタイマーおよび、6つのGPIOピンなど備えるほか、UART、SPI、I2Cなどの標準通信インタフェースをサポート。「正確で高速なアナログコンポーネントを世界最小のMCUに統合することで、設計者は基板サイズを大きくすることなく、組み込みシステムの処理性能を柔軟に維持できる」としている。動作温度範囲は−40〜+125℃で、動作供給電圧は1.62〜3.6V。最適化された低電力モードによって、動作時の消費電力は87μA/MHz、SRAM保持付きのスタンバイ時は5μAと、高い電力効率も実現している。
embedded world 2025のブースでは、実物をルーペ越しに展示していたほか、さまざまなサイズのチップ抵抗などの中に1つだけ紛れ込ませ「Find the MSPM0C WCSP!(MSPM0CのWCSP品を探せ!)」と来場者を楽しませる展示などを行っていた。
説明担当者は新製品について、「われわれはより小さいパッケージやダイサイズを目指しているが、同時に優れたパフォーマンスも維持しなければならない。そのため周辺機器、回路設計、プロセッサの各面で最適化を進め、最終的に世界最小となる小型パッケージを実現した。顧客からのフィードバックも非常に好評だ」と説明していた。
MSPM0C1104のWCSP品の単価は1000個購入時に0.20米ドルだ。なおTIのMSPM0 MCUは、ピン互換のパッケージオプションを備えていて、MSPM0C1104も、WCSPのほかに複数パッケージが用意されている。
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