ショットキーダイオード内蔵GaNパワートランジスタ、Infineonが開発:産業向けに
Infineon Technologiesが、「世界初」(同社)となる、ショットキーダイオード内蔵の産業用GaNパワートランジスタ「CoolGaN Transistors G5」ファミリーを開発した。デッドタイム損失を低減することで電力システムの性能を向上し、システム全体の高効率化を進めると同時に、パワーステージ設計簡素化による部品表(BOM)コスト低減も実現するとしている。
Infineon Technologies(以下、Infineon)は2025年4月14日(ドイツ時間)、「世界初」(同社)となる、ショットキーダイオード内蔵の産業用GaNパワートランジスタ「CoolGaN Transistors G5」ファミリーを開発したと発表した。デッドタイム損失を低減することで電力システムの性能を向上し、システム全体の高効率化を進めると同時に、パワーステージ設計簡素化による部品表(BOM)コスト低減も実現するとしている。
従来、ハードスイッチングアプリケーションでは、GaNベースのトポロジーはGaNデバイスの実効ボディダイオード電圧(VSD)が大きいため、電力損失がより大きくなるという課題があった。この問題は、特にコントローラーのデッドタイムが長い場合に顕著で、目標とする効率が得られないケースも発生。そのため設計者は、外付けのショットキーダイオードを並列に接続するか、コントローラーを介してデッドタイムを短縮するなどの対策をとる必要があったという。ただ、こうしたアプローチは設計の手間や時間、コストを増加させる要因となってた。
今回、Infineonが発表したCoolGaN Transistor G5では、ショットキーダイオードを内蔵したことで、これらの課題を大幅に緩和したとしている。
GaNトランジスタの逆方向伝導電圧(VRC)は、しきい値電圧(VTH)およびオフ状態のゲートバイアス(VGS)によって決定されるが、従来のGaNトランジスタはボディーダイオードを持たないため、逆方向伝導動作(第三象限動作)においてシリコンダイオードのターンオン電圧に対して不利な条件を抱えていた。ショットキーダイオード内蔵のCoolGaN Transistor G5では、逆方向伝導ロスを低減するとともに、より幅広いハイサイドゲートドライバーとの互換性を実現。さらに、デッドタイムの制約が緩和されることで、さまざまなコントローラーとの互換性が広がり、設計が容易になるとしている。
Infineonの中電圧GaN製品ライン担当バイスプレジデントであるAntoine Jalabert氏は「GaN技術が電力設計分野でますます普及する中、当社は顧客の進化するニーズに応えるため、継続的な改善と強化を重視している。ショットキーダイオード内蔵のCoolGaN Transistor G5は、ワイドバンドギャップ半導体材料の可能性をさらに広げるための革新を迅速に顧客へ届けるという、Infineonの取り組みを象徴する製品だ」とコメントしている。
新製品ファミリーは、サーバや通信機器向けの中間バスコンバーター(IBC)、DC-DCコンバーター、USB-Cバッテリーチャージャー用同期整流器、高出力電源装置(PSU)、モータードライブなど、多岐にわたる用途を想定。Infineonは、最初の製品として3x5mm PQFNパッケージの100V 1.5mΩトランジスタを発表している。
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