関税よりはマシ? 米国でのチップ生産を表明したNVIDIAとAMD:TSMCアリゾナ工場で製造開始(1/3 ページ)
NVIDIAとAMDは2025年4月、TSMCのアリゾナ工場でチップの製造を開始すると発表した。トランプ政権の“先行き不透明な”関税政策に対処するためとみられる。アナリストらは、今回の関税政策により、米国で使われる半導体の大半が米国で製造されるようになる可能性もあると指摘する。
NVIDIAとAMDは2025年4月14日(米国時間)、ドナルド・トランプ米大統領が数日後に半導体に関税を課すと表明したのと時を同じくして、米国アリゾナ州にあるTSMCの新しい半導体施設で生産を開始すると発表した。アナリストらが米EE Timesに語ったところによると、「この2つの出来事は偶然の一致ではない」と思われる。
TechInsightsのバイスチェアマンを務めるDan Hutcheson氏はEE Timesに対し「要するに、AMDとNVIDIAは生産拠点を米国に移すことで、関税の不確実性に対処している。米国で製造することで、関税によるコスト変動のリスクがなくなり、それが収益の安定性の向上に直接つながるためだ」と語った。
NVIDIAは4月14日、同社のAIチップ「Blackwell」の製造を、アリゾナ州フェニックスにあるTSMCの工場で開始したと発表した。同社のCEOを務めるJensen Huang氏はプレスリリースで「世界のAIインフラのエンジンが、初めて米国で製造されることになる。米国に製造拠点を追加することで、AIチップやスーパーコンピュータに対する驚異的な需要の高まりにより適切に対応し、サプライチェーンの強化やレジリエンス(回復力)の向上を実現できる」と述べている。
AMDのCEOであるLisa Su氏も4月14日に、TSMCのアリゾナ工場で生産を開始すると発表した。同氏はプレス声明で「TSMCの『N2』プロセスおよびアリゾナ工場『Fab 21』の主要顧客であることは、当社がTSMCと緊密に協力してイノベーションを推進していることを示す好例である」と述べている。
TSMCアリゾナ工場の最先端ノードは「N4」で、台湾のN2より約2世代遅れている。N4とN2は、TSMCの4nm世代ノードと2nm世代ノードの名称である。
NVIDIAは今後4年以内に、アジアを拠点とするサプライヤーであるTSMCやFoxconn、Wistron、Amkor Technology、SPILとの提携を通じて、米国に最大5000億米ドル規模のAIインフラを構築する計画だとしている。
このコミットメントは、ハイテク製造業を米国に取り戻すというトランプ大統領の目標を支えるものだ。Appleは2025年2月、同社のAIサービスである「Apple Intelligence」をサポートするサーバを製造するために、今後4年間で米国に5000億米ドル以上を投資すると発表した。
Appleが1月にTSMCアリゾナ工場の最大顧客となったことは、この計画の実現に向けた一歩だといえる。
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