関税よりはマシ? 米国でのチップ生産を表明したNVIDIAとAMD:TSMCアリゾナ工場で製造開始(2/3 ページ)
NVIDIAとAMDは2025年4月、TSMCのアリゾナ工場でチップの製造を開始すると発表した。トランプ政権の“先行き不透明な”関税政策に対処するためとみられる。アナリストらは、今回の関税政策により、米国で使われる半導体の大半が米国で製造されるようになる可能性もあると指摘する。
半導体製造の米国移管が進む?
アナリストらは「トランプ大統領が関税を課すと予想されることから、今後数カ月でより多くの半導体生産が米国に移管される可能性が高い」と指摘している。
SemiAnalysisのアナリストであるJeff Koch氏は「今回の発表のタイミングは、最高の演出によってトランプ政権からの好感を買うために画策されたものだ」と述べる。
Koch氏は「ウエハー供給に関する合意は、これらの発表のかなり前に成立しているはずだ。トランプ大統領は公言通りに半導体に対する関税を発表する可能性が高いが、ロビー活動は非常に効果的に働くだろう。Huang氏がマールアラーゴ(Mar-a-Lago)での夕食会でトランプ大統領と会談した後に、NVIDIAの中国での販売が守られることになったのは、その最たる例だ。米国の大規模で強力な半導体企業の多くは、何らかの免除を勝ち取る可能性が高いが、措置の範囲や永続性、詳細が不透明であることが何よりも問題だ」と付け足した。
ワシントンD.C.を拠点とするAlbright Stonebridge Groupでグローバルな技術企業の顧客に向けてアドバイスを行っているPaul Triolo氏は「“トランプ効果”とは、あえて言うなら、関税を利用して、既に進行中の取引を断行させ、米国の雇用創出と一部の製造能力のオンショア化に貢献したと主張することである」と述べている。
「現時点では、関税やトランプ政権の意向に同調しているように振る舞うことが、いずれにせよ実現する可能性が高い取引への支援を獲得する最良の方法だと思われる」(Triolo氏)
Intel Foundryへの発注は増えるのか
Moor Insightsの主席アナリストを務める Patrick Moorhead氏は「この関税によって、米国で使用される全ての半導体が米国製になる可能性がある」と述べている。「米国で使用される主要チップは、TSMC、Intel、Samsung Electronics、GlobalFoundriesのいずれかの工場で製造されることになると予想される。2025年5月頃に、Intel関連で何らかの発表があると考えている。TSMCは現時点では、全ての顧客に対応できる状態にはないため、一部の大企業がIntelと取引することになると予想される」と述べている。
Koch氏は「台湾の旧ノードで製造されたTSMCのチップの販売は、関税の影響を受ける可能性があるため、米国のIntel Foundryへ発注のシフトが進むかもしれない」と指摘する。
「公言通りに関税が課されれば、TSMCのファブレス顧客は、旧世代の製品ラインや重要度の低い製品ラインの一部をIntel Foundryに移管する可能性が高い。例えば、NVIDIAはローエンドのゲーム用GPUの一部をIntel Foundryで製造する可能性が高い」(Koch氏)
TSMCは2025年1月、Apple向けに米国で初の4nmチップの生産を開始した。
Intelは2025年後半、米国でTSMCの2nmノードと同等の「18A」プロセスを立ち上げる予定だという。
Intelがファウンドリー事業をさらに獲得できるかについて懐疑的な見方をするアナリストもいる。Triolo氏は「これまでのところ、NVIDIAもAMDも第2の選択肢としてIntelを検討している兆候はほぼない。特に、アリゾナ州にあるIntelの先進ファブは量産に向けてフル稼働しているとは思えない。また、オハイオ州の施設の稼働は2030年まで保留されている」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.