ソニーのCIS技術が生きる! 細胞の活動を「圧倒的な高解像度」で可視化する新技術:23.7万電極のMEAシステム(2/3 ページ)
ソニーセミコンダクタソリューションズとSCREENホールディングス、VitroVoの3社は2025年6月3日、電極数約23万7000個の高密度「CMOS-MEA(Microelectrode Array)」を用いたMEAシステムを共同開発し、試験提供を開始したと発表した。
「動物実験の廃止」創薬の課題の中で高まる高精細化の要求
新薬の研究開発では、非臨床試験における効果測定や安全性評価の精度向上、開発プロセスのさらなる効率化が求められている。
近年では、新薬の臨床試験前に義務付けられている動物実験を代替する新たな実験手法として、AIなどの先端技術やヒトiPS細胞由来の神経/心筋細胞およびオルガノイドなどの生体模倣システムを活用した新技術の開発ニーズも高まっている。2025年4月には米食品医薬品局(FDA)も、こうした動物実験を求めるのをやめ、代替技術に置き換えていく方針を発表している。疾患研究においても、より精緻な細胞データの取得が研究活動に寄与すると期待されている。
こうした高まる要求への対応としてソニーセミコンとSCREENホールディングス(以下、SCREEN)、東北工業大発ベンチャーのVitroVoら3社は今回、東北工業大の協力も得て、ソニーセミコンのCMOS-MEAを活用した新たな高密度MEAシステムを開発。医薬品開発に携わる企業や研究機関に向けて試験提供を開始した。
SCREENらと共同開発、システムの詳細
高密度MEAシステムは、ソニーセミコンのCMOS-MEAとSCREENグループが有する細胞の電気活動の計測技術を組み合わせたもの。細胞外電位を高密度に配置された微小電極で検出し、画像データとして出力する。これによって、ユーザーは細胞の「発火」※)をモニタリングしながら、その反応を計測、記録できる。
さらに、ソニーセミコンと東北工大との共同研究を元に、VitroVoが化合物評価向けに最適化したアルゴリズムと、ユーザー視点での操作性を追求した解析アプリケーションも実装。これによって、電位や画像などの計測値から算出される細胞の発火頻度などの解析結果が、モニター上に迅速に表示される。
これらの計測/解析機能によって、従来のMEAシステムよりも高密度な細胞活動データの取得が可能になると同時に、ユーザーにとって計測が困難だった実験結果を得られるようになるとしている。
※)神経細胞が活動電位を生成し、電気的興奮を引き起こすことで神経伝達物質を放出し、周囲の神経細胞へと情報を伝達する現象のこと
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