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トランプ関税は「無理筋」 半導体企業が相次ぎ懸念表明米国の自給自足には数十年かかる(4/4 ページ)

米トランプ政権の関税政策に対し、半導体関連企業が次々に懸念を表明している。TSMCは、これ以上の措置がある場合、進行中あるいは検討中のプロジェクトの実行が危うくなると苦言を呈す。

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Qualcomm「海外ファブに依存する必要がある」

 半導体メーカーや設計メーカーは「米国が半導体輸出規制を強化することで、自国の産業界に悪影響が及ぶ可能性がある」と警告する。

 AIチップ設計メーカーのGrokは「トランプ政権は、輸出規制を簡素化することによって米国のAIチップ業界を支援すべきだ」と要請している。

 Grokは「トランプ政権は、2025年1月15日に発効した暫定規制『AI拡散フレームワーク(Framework for Artificial Intelligence Diffusion)』(いわゆる『AI拡散規則(AI Diffusion Rule)』)を修正すべきだ。このAI拡散規則の草案は現在、米国のAIチップメーカーが自社技術を輸出する際に大きな負担を強いるものであり、特にGroqのような米国市場のAIチップ分野における新規参入企業に対して大きな害を及ぼしている」と主張する。

 スマートフォン向けチップメーカーQualcommは「Section 232の措置は、外国市場の閉鎖化や、報復措置、米国企業の製品に対する需要の減少などにつながる可能性があり、世界の技術リーダーとしての米国の位置付けが“非常に危うくなる”だろう」と述べる。同社は、海外市場を頼みの綱としていることに加え、この先長年にわたりアジアのサプライヤーにも依存するとみられる。

 Qualcommは「われわれは今後も、生産の大部分を台湾や韓国をはじめとする海外ファブに依存していかなければならない」と述べる。

 さらに「短期的な半導体への関税は、それが個々の半導体チップであれ他の製品に搭載するための半導体チップであれ、米国やその労働者たちに相応の経済的メリットをもたらすことなく、米国の半導体メーカーに損害を与える可能性がある」と付け加えた。

 「Qualcommは引き続き、当社製品が販売されている海外市場へのアクセスを確保しなければならない。現在、半導体業界とそこで巻き起こっているAI革命は、複雑に相互依存しているグローバルなサプライチェーンエコシステムによって支えられており、そこでは非常に小さな混乱でも、海外の競合メーカーにとてつもなく大きな技術的優位性を与える可能性がある。海外諸国が関税引き上げに対応する上で、自国の製品から米国の要素を排除すべく連携するとなれば、米国の技術リーダーシップの喪失がさらに悪化していく恐れがある」(Qualcomm)

インセンティブ強化の必要性

 TSMCは「トランプ政権が、米国の国家安全保障のために半導体製造のオンショアリングを促進するさらなる措置の実施を決定した場合、われわれは開発推進策を推奨する」と述べている。「トランプ政権が国家安全保障上の目標を推進するためには、投資インセンティブの増加や規制の緩和によって、新しい製造施設のスピーディな建設を促進する方が、輸出規制よりもずっと建設的である。トランプ政権は、2026年12月31日に期限切れとなる先端製造投資税額控除(Advanced Manufacturing Investment Credit:IRC Section 48D)を延長すべきだ。この税額控除の延長は、われわれが引き続きアリゾナのGIGAFAB事業を構築していく上で、重要な支援となるだろう」と述べている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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