EDA業界に打撃必至か 米政府が中国販売の規制を強化:最先端半導体向け以外も対象に(2/2 ページ)
米政府が、EDAツールの中国販売の規制を強化する。これまでは最先端半導体の設計に必要なツールだけが対象だったが、それ以外にも規制対象を広げる。主要EDAベンダーにとって中国市場での売上高は無視できないほど大きいだけに、業績へのマイナス影響は避けられないとみられる。
各社が影響を精査中
新たな規制に関して、影響を受ける各社の声明にはばらつきが見られる。Synopsys のCEOを務めるSassine Ghazi氏は、輸出規制を監督する商務省の産業安全保障局(BIS)から具体的な通知は受けていないとし、「報道や臆測は承知しているが、SynopsysはBISから通知を受けていないし、書簡も受け取っていない」と述べていた。
しかし、5月29日に「2025年4月30日を期末とする2四半期決算発表後の5月29日、米国商務省の産業安全保障局から、中国に関連する新たな輸出規制を通知する書簡(以下「BIS書簡」)を受け取った。現在、このBIS書簡が当社の事業や業績、財務状況に与える潜在的な影響を評価中である」と記載した「フォームK-8」を証券取引委員会に提出した。
一方、Siemensは、EDA業界が2025年5月下旬に、中国および中国軍のエンドユーザーに対するチップ設計ソフトウェアの新たな輸出規制について通知されたとする声明を発表している。
Siemensは声明の中で「5月23日、米国政府はEDA業界に対し、中国および世界中の中国軍エンドユーザーに対するEDAソフトウェアの新たな輸出規制について通知した。Siemensは150年以上にわたって中国の顧客をサポートしてきた。適用される各国の輸出規制を順守する一方で、今後も世界中の顧客と協力して、これらの新たな規制の影響を軽減していく」と述べている。
Cadenceは、報道された書簡に関する具体的なコメントは差し控えたが「2025年5月23日、BISはCadence Design Systemsに対し、取引の当事者が中国に所在する場合、または所在地にかかわらず中国の軍事エンドユーザーである場合、EDAソフトウェアおよび技術の輸出、再輸出、または国内移転にライセンスが必要となったことを通知した」と記載したフォームK-8を提出している。
EDAソフトウェアへの注目の高まりは、半導体設計におけるEDAソフトウェアの根本的な重要性に起因している。EDAツールは、7nm、5nm、3nmおよびそれ以降のプロセスを含む最先端ノードのチップ設計に不可欠である。これらのプロセスは複雑であるため、最も高度な機能が必要となる。
米国政府は、これらの最先端ツールへの中国のアクセスを制限することは、AIや高性能コンピューティング(HPC)、軍事用途に必要なハイエンド半導体を中国が独自に設計・製造する能力を抑制する手段になると考えている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ローム、SiC MOSFET用の新SPICEモデルを公開
ロームは、パワー半導体のシミュレーション時間を従来に比べ半減できる新SPICEモデル「ROHMレベル3(L3)」を開発した。L3の第4世代SiC MOSFETモデル(37機種)は既にウェブサイト上で公開しており、製品ページ画面などからダウンロードできる。トランプ関税は「無理筋」 半導体企業が相次ぎ懸念表明
米トランプ政権の関税政策に対し、半導体関連企業が次々に懸念を表明している。TSMCは、これ以上の措置がある場合、進行中あるいは検討中のプロジェクトの実行が危うくなると苦言を呈す。キオクシアの四半期業績、2四半期連続の減収減益に
今回はキオクシアホールディングスの2024会計年度(2025年3月期)第4四半期(2025年1月〜3月期)業績を紹介する。チップレット集積の鍵は「三位一体」
「SEMICON Japan 2024」で新設された「ADIS(Advanced Design Innovation Summit、アディス)」では、EDAベンダー各社がチップレット集積など2.5D/3D ICの設計に向けたツールを展示した。大手ベンダーは「チップレット集積では、チップ、パッケージ、プリント基板(PCB)の設計データを統合しながら、並行して設計を進めることがスピーディな開発につながる」と口をそろえた。【訂正あり】Intel新CEOにCadence出身のLip-Bu Tan氏 分割案にはブレーキか
Intelは、Cadence Design Systemsの元CEOであるLip-Bu Tan氏を新しいCEOに任命した。米国の厳しい対中規制 目的見失えば逆効果に
米国は2024年12月に、新たな対中輸出規制を発表した。この一撃は両国間の技術戦争においてこれまでで最も強力なものだが、アナリストによれば、その効果には疑問があり、米国のイニシアチブは不十分かもしれないという。