微細化前倒しや3層積層の強化……「市場で勝ち切る」ソニーの半導体戦略:「高密度化」が進化のけん引役に(2/4 ページ)
イメージセンサー市場において「勝ち切る」と目標を掲げ、技術力強化と成長投資を進めるソニーセミコンダクタソリューションズ。今回、同社社長、指田慎二氏ら幹部らが市場の見通しや事業戦略などを語った。
「動画」が市場をけん引、ソニーは技術の総合力で優位性強化
指田氏はイメージセンサー市場成長のけん引役として「動画」を挙げ、2次元(2D)のイメージングに、深度、時間、スペクトルなど別次元の情報を組み合わせ「イメージングセンサーの提供価値をさらに向上させていく」と説明。その上で、これらの特性進化の全体のべースであり、最も進化が求められているのは2Dイメージングの技術であり、モバイルカメラがその技術進化をけん引すると語った。
動画は静止画と異なり、後段の処理に時間をかけることが難しく、その性能をリアルタイムに発揮することが求められる。指田氏は、今後モバイルカメラでは「感度/ノイズ」と「ダイナミックレンジ」を高レベルで実現することは大前提とし、動画性能をさらに向上させるための「解像度」が重要な進化軸となると言及。また、データ量の増加に対し「読み出し速度」の進化も必要となると同時に、これらを「低消費電力」で実現する技術も必要となると述べ、「各特性のトレードオフを解消しながら、5つ全ての方向で総合的に進化させていくことが重要だ。このセンサー技術の総合力こそがわれわれの強みであり、動画活用の広がりとともにこの優位性をさらに強化できる」と強調した。
「大判化」の次は「高密度化」が焦点
SSSは、これまでスマホカメラの多眼化やセンサーの大判化というトレンドを捉え技術を進化し事業を拡大してきた。また、特に大判化は上述の特性進化に大きく貢献してきたという。この大判化は現在も順調に進捗していて「少なくとも2030年度までこのトレンドは進むと見ている」という。
なお、同社が示したモバイル用イメージセンサー市場の大判化(高級機種帯)の2030年度までの予測(左下図)をみると、メインカメラでは2028年度以降横ばいで、サブカメラも2029年度から2030年度にかけては微増となっている。指田氏は、動画性能が重要となる今後の市場に向けた特性進化のためには「大判化のみでは限界がある」とした上で、「次の進化のドライバーは『高密度化』だ」と言及。この高密度化実現に必要な技術として、プロセスノードの適合化による「平面方向の高密度化」と、多層化による「垂直方向の高密度化」を挙げ、「センサーの限られたスペースの中で、縦と横2つの方向で高密度に素子を実装することで特性を高められる」と述べた。


特性向上の限界を先端プロセスで突破、成熟も継続活用
プロセスノードの適合化については「既存の成熟プロセスは、画素サイズの大小に関わらず、センサーの特性とコストのバランスを踏まえた活用が可能だが、特性向上という点では限界に近づいている」と説明し、この限界を突破するために、イメージセンサーとしては先端となるプロセス技術を新たに立ち上げることが不可欠だと強調。「いずれのプロセスも目的に応じて使い分けることで共存は可能だが、動画を起点とした『リアルタイムクリエイション』に貢献していくためには、高密度化を実現する先端プロセスの適合が必要になる」と述べた。
大池氏もこの点について「半導体製造に用いるより微細なプロセス技術と、既存のプロセス技術を使って開発してきたイメージセンサーのさまざまなテクノロジーを組み合わせることで、限界に近づいてきた特性をさらに向上させる。画素の大小に関わらず素子を高密度に実装できるので、今後計画しているさまざまな製品に適用できる」と説明。一方、性能とコストのバランスを追求する場合は成熟プロセスを活用する方針で、「先端、成熟でそれぞれで役割があり、目的に応じてプロセスを適合させていくことで保有する設備を効率的/効果的に活用していく」と語っていた。
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