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SoC設計期間を「10分未満」に短縮 インドRISC-V新興非AIベースで「再現性が強み」(2/3 ページ)

インドのファブレス新興企業InCore Semiconductorsが、SoC(System on Chipd9JcATMa)設計プラットフォーム「SoC Generator」を発表した。この自動化ツールは、従来数カ月かかるコンセプトからFPGA検証までのSoC設計に要する時間を、10分未満に短縮するという。

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「100万回同じ出力を得る」 再現性が強み

 InCoreにとって、このような取り組みを立ち上げる際に最も難しかったのが、社内のプロトタイプをエコシステムツールに変換することだったという。同氏は「自社独自のデモを作製するのは容易だったが、全てのサードパーティー製IPをプラグインできるようにAPIをリファクタリングするのは大変な作業だった」と述べる。

 生成AIベースの設計ツールとの比較に対してInCoreのチームが即座に明示したのは「SoC Generatorは確率論的なAIモデルをベースとして構築されたものではない」という点だ。重要な差別化要因は再現性だという。

 Gala氏は「半導体設計において、再現性は譲れない部分だ。同じ設計フローを100万回実行した場合、毎回同じアウトプットを得られなければならない。生成AIは、単純にそのようなレベルの保証を提供できないのだ」と述べる。

 生成AIはクリエイティブな概念を生み出すには理想的だが、一貫性のない、あるいは幻覚のような結果を出力することがある。しかし、半導体設計には正確さが不可欠だ。ミスが生じるとテープアウトの失敗で数百万米ドル規模の損失を出しかねない。

 「だから私たちは、生成AIをツールの中心に組み込まなかった。しかし、ユーザーが迅速にアイデアや構成の概略を練り、SoC Generatorがそれをもとに決定論的に構築できるようサポートする上では価値があると考えている」(Gala氏)

将来的にはHPCや自動車もターゲットに

 同社がターゲットに定めているのは、Armからの移行を検討するスタートアップや、それに続く第2波のユーザーだという。InCoreのCMO(最高マーケティング責任者)であるDeepak Sahoo氏は「柔軟なライセンス供与が可能なので、スタートアップ向けにはプロジェクトごとの従量課金制を、大規模な企業にはサイトのサブスクリプションを提供する。IPバンドル(InCoreのCPU/NoC/セキュリティブロック)は、オプションのアドオンであり、ロックインすることはない」と付け加えた。

 InCoreは、SynopsysやCadence、Siemensからの移行についてはコメントを拒否している。

 Gala氏は「このような巨大企業は、『RTL-to-GDSII』で優位性を確立している。私たちは、『YAML-to-RTL』に対応する。顧客がDesignWareやArmのペリフェラルを保有している場合、私たちのジェネレーターはそれをローカルIPとうまく調和させることができる」と述べる。

 また同氏は「Arm/DesignWareフローと既に深く関わっている欧米の開発チームにとって魅力的なのは、ツールをつなぎ合わせる必要なくRISC-Vハードウェアやソフトウェア、FPGA画像を評価できる『ワンストップショップ』であるという点だ」とする。

 InCoreのプラットフォームの主な差別化要因は、NoCが完全に構成可能であり、コアのクラスタリングやペリフェラルの隔離、ドメイン間のトラフィックバランシングなど、インターコネクトを電力や面積、帯域幅などのニーズに合わせられるという点だ。InCoreのNoCアプローチは、設計者を固定されたトポロジーに縛り付けることなく、進化するチップ要件に対応できるよう設計されている。

InCoreのテストチップのブロック図
InCoreのテストチップのブロック図[クリックで拡大]出所:InCore Semiconductors

 Gala氏は「NoCジェネレータの最初のバージョンは、既に稼働している。またわれわれは、今後18カ月間で多額の投資を行い、低消費電力アイランドから高スループット設計に至るまでの全てをサポートできるよう、アーキテクチャの柔軟性を高めていく」と述べる。

 「SoC Generatorは、初期段階の実証は組み込みクラスにとどまっているものの、はるかに大規模な設計向けに構築されている。私たちのAPIは、それを駆動するIPが超小型のUARTであろうと2000コアのAIエンジンであろうと関係ない。AI推論やセーフティクリティカルな自動車など、あらゆるものをターゲットにできる。エッジケースを解決するにはもっと実世界でのエンゲージメントが必要になるが、そのためにプラットフォームを再構築する必要はない」(同氏)

 InCoreは、高性能コンピューティング(HPC)への進出には、タイミングと電力を考慮したプリミティブの追加が必要だと予想しているが、それは書き直しではなく「有機的な進化」だとしている。

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