onsemi、UnitedSiC含むQorvoのSiC JFET事業を買収へ:1億1500万ドルで
onsemiが、Qorvoから子会社United Silicon Carbide(UnitedSiC)を含むSiC(炭化ケイ素) JFET事業を買収すると発表した。買収額は1億1500万米ドルで、2025年第1四半期に完了する予定だ。同技術の取得によって、AI/データセンターや自動車市場などでの成長加速を狙う。
onsemiは2024年12月9日(米国時間)、Qorvoから子会社United Silicon Carbide(UnitedSiC)を含むSiC(炭化ケイ素) JFET事業を買収する契約を締結したと発表した。買収額は1億1500万米ドルで、2025年第1四半期に完了する予定だ。同技術の取得によって、AI(人工知能)/データセンターや自動車市場などでの成長加速を狙う。
Qorvoは2021年11月、UnitedSiCの買収を発表。UnitedSiCは、Qorvoのパワーデバイスソリューションズ部門として事業を行ってる。onsemiは、今回の買収について「onsemiの広範な『EliteSiC』電源ポートフォリオを補完し、AIデータセンター向け電源装置のAC-DCステージにおける、高いエネルギー効率と電力密度のニーズへの対応を可能にする。さらに、EV(電気自動車)用バッテリー遮断やソリッドステートサーキットブレーカー(SSCB)といった新市場への当社の対応を加速させる」と述べている。
低いオン抵抗×面積が特長
SiC JFETは、チップ面積当たりのオン抵抗が低い点が特長で、onsemiは、「特定のアプリケーションにおいて半導体技術の中で最も高い効率を実現する」と説明。また、従来シリコンベースのトランジスタで使用されてきた一般的な市販のドライバーも使用でき、開発の迅速化、エネルギー消費の削減、システムコストの低減を実現。「電源設計者やデータセンター事業者に大きな価値をもたらす」としている。一方で、JFETは容易に並列化できないため、トラクションインバーターのような大電力アプリケーションでは使用されない。
SiC JFETは低オン抵抗で、高速スイッチングが可能なことから、AI/データセンターラック用電源の小型化および高効率化を実現できる。上述のようにダイサイズが小さく既存のドライバーを使用できることから、高効率かつシステム全体のコストを抑えられ、「SiC JFETはシリコンスーパージャンクションMOSFETにとって代わり、GaN(窒化ガリウム)と競合することが期待されている」という。
またEV用バッテリー遮断ユニット(BDU)向けでも、onsemiは「SiC JFETは、電気機械的なソリューションよりも高速で安全かつ信頼性が高く、全ての高電圧半導体技術の中でオン抵抗が最も低いため、最高の効率を提供する」などと利点を挙げている。
onsemiのパワーソリューショングループでグループプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるSimon Keeton氏は、「AIのワークロードがより複雑化し、エネルギーを大量に消費するようになるに従い、高いエネルギー効率を実現し、高電圧に対応可能な信頼性の高いSiC JFETの重要性はますます高まるだろう。QorvoのSiC JFET技術が加わることで、当社のインテリジェントパワーポートフォリオは、エネルギー消費を最適化し電力密度を高める新たなソリューションを顧客に提供する」と強調している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 耐圧1200VのSiC FET、低いオン抵抗×面積を実現
SiCパワーデバイスを手掛けるUnitedSiC(現Qorvo)は2022年5月20日、同社の「第4世代(Gen4)SiC FET」となる耐圧1200VのSiC FETを発表した。なお、UnitedSiCは2021年11月にQorvoが買収し、現在はQorvoのパワーデバイスソリューションズ部門として事業を行っている。 - QorvoがUnitedSiCを買収、SiC開発競争の最中に
Qorvoが、米国ニュージャージー州プリンストンに拠点を置くSiC(United Silicon Carbide)パワー半導体メーカーUnitedSiCを買収した。QorvoはこのUnitedSiC買収により、現在急速な成長を遂げている、電気自動車(EV)や産業用電力制御、再生可能エネルギー、データセンター用パワーシステムなどの市場へと対応範囲を拡大していくことになる。 - オン抵抗6mΩ品など耐圧750VのSiC FETを発表
米国UnitedSiCは、耐圧750Vでオン抵抗が6mΩと小さいSiC(炭化ケイ素)FETを発表した。競合するSiC MOSFET製品に比べオン抵抗は半分以下で、短絡保証時間定格は5マイクロ秒を実現している。 - onsemi、SiCファミリ「EliteSiC」を発表
onsemiは2023年1月3日(米国時間)、SiC(炭化ケイ素)を用いたパワーデバイス製品群の名称を「EliteSiC」とすると発表した。 - 「業界初」中国SICCが300mmのSiC基板を発表
中国のSiC基板メーカーSICCが、「業界初」となる300mmのSiC基板を開発した。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州最大級のエレクトロニクス展示会「electronica 2024」および併催された「SEMICON Europa 2024」で発表した。 - 「半導体メーカーもサステナビリティ戦略は必須」 onsemi CMO
サステナビリティ戦略は半導体メーカーにとっても重要になっている。onsemiでシニアバイスプレジデント兼CMO(Chief Marketing Officer)を務めるFelicity Carson氏は、「顧客は半導体サプライヤーのサステナビリティ戦略を強く意識している。プロダクトカーボンフットプリントなどの情報提供を求める声も強くなっている」と語る。