中国の巨大市場を無視できず 米がAIチップ規制強化を撤回:NVIDIAが「H20」の出荷再開へ(2/2 ページ)
NVIDIAは中国へのAI GPUの出荷を再開する。中国市場はNVIDIAに数十億米ドルの収益をもたらす可能性がある。米国による先端AI半導体の対中規制は、業界からは不評で「厳しすぎる」との声が上がっていた。
Huang氏やAMDのLisa Su氏が規制に懸念表明
H20は、NVIDIAの前世代の主力GPU「H100」の機能を大幅に縮小したバージョンだ。H20は当時施行されていたAIチップの規制に準拠するよう設計されており、中国を含む特定の国の顧客に出荷されるAIアクセラレーターチップの性能と帯域幅が制限されていた。出荷再開は、トランプ政権の規制がバイデン政権の規制と同等、またはそれよりも緩和されていることを示しているのかもしれない。
ことし3月に開催した「GTC 2025」でHuang氏が主張した点や、GPU競合のAMDの最高経営責任者Lisa Su氏が最近の上院公聴会で指摘した点は、米国の半導体大手が、米国製チップへのアクセスがなければ、中国の競合他社が躍進することを懸念していることを示している。
「現在は米国がリードしているが、私が言いたいのは、これはレースだということだ」とSu氏は上院公聴会で述べた。「リーダーシップは絶対に保証されていない。今後何十年にもわたって国家安全保障と経済繁栄の結果を形成する世界的な競争なのだ」
業界は国家安全保障の重要性を理解しているが、輸出規制については慎重に検討する必要があるとSu氏は述べた。
「現在われわれがリードしているのは、われわれが最高の技術を持っているからだ。だが、われわれの技術が世界の他の地域で完全に採用されなければ、他の技術が台頭することになるだろう。そうした技術は、現在のわれわれの技術ほど優れてはいないかもしれないが、使われることでイノベーションは促進される」(Su氏)
Huang氏はGTCで中国のエンジニアの才能を称賛し、世界のAI研究者の約半数が中国出身であり「(AI研究者の)最大の人口」であると述べた。「米国のAI研究所には例外なく優秀な中国人研究者が多数存在する。中国からのAI研究の貢献が大きくなるのは当然のことだ」
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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