「GaNのコストは5年以内にSi並みに」 ロームの勝ち筋は:GaN搭載6.6kW OBC試作品を公開(1/3 ページ)
「窒化ガリウム(GaN)は、遅くとも5年以内にシリコン(Si)のコストに追い付くだろう」――。ロームは、GaNパワー半導体の大きな課題の1つとされるコスト面について、こうした見解を示す。民生向け中心からAIサーバや車載などへの展開が加速し、本格化してきたGaNパワー半導体市場。ロームは、GaNのさらなる普及に注力しながら、独自の強みを生かし市場での存在感を高めていく方針だ。
「窒化ガリウム(GaN)は、遅くとも5年以内にシリコンのコストに追い付くだろう」――。近年、GaNパワーデバイス事業を強化するロームは、GaNの大きな課題の1つとされるコスト面について、こうした見解を示す。民生向け中心からAIサーバや車載などへの展開が加速し、本格化してきたGaNパワー半導体市場。ロームは、GaNのさらなる普及に注力しながら、独自の強みを生かし市場での存在感を高めていく方針だ。
ロームは2025年8月に、車載用GaNパワーデバイスのサンプル出荷を開始する予定で、今後GaNの利用拡大が見込まれるオンボードチャージャー(OBC)などへの採用を狙う。ドイツで開催された世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo&Conference 2025」(2025年5月6〜8日)では、同社のGaNデバイスを採用した6.6kW オンボードチャージャー(OBC)試作品を初公開し、その利点をアピールしていた。
いかにGaNを普及させるかを重視
ロームは2022年3月、GaNデバイス製品の第1弾として150V耐圧GaN HEMTの量産体制確立を発表して市場に参入後、2023年には、650V耐圧のGaN HEMTの量産を開始。その後もディスクリート品のほか、「GaNデバイスの性能を最大限に引き出す」(同社)ゲートドライバー、GaN HEMTとゲートドライバーを同梱したSiP(System in Package)などを相次いで発表し、展開を加速してきた。
そして2025年2月には、村田製作所グループであるMurata Power SolutionsのAIサーバ向け電源ユニットにロームのGaNデバイスが採用され、2025年中に量産開始の予定だと発表。それまでは民生機器向けが中心だったが、この実績を追い風に、AIサーバ用電源での採用拡大を狙っている。
ロームのLSI開発本部 電源・標準LSI開発担当 パワーGaNソリューション開発部 部長(取材当時)の山口雄平氏は「GaNデバイスとその性能を引き出すドライバー、さらにSiP、これらが民生のアダプターからサーバ向けまで製品がそろってきて、コンセプトが明確になった。GaNによってどれだけ電力密度が上がるか、小型化が実現できるかなどが見えた。また、GaNは現在シリコンと比べて高いとされているが、遅くとも5年以内にはシリコンのコストに追い付くだろう。そうしたレベルに需要が上がってきている」などと説明。こうした環境において、ロームは「GaNの普及」を重視しているのだという。
「GaN事業では、従来のビジネスモデルと勝ち方が少し違う。従来のビジネスでは、われわれはコンポーネントを納め、ティア1メーカーなどの顧客から価値を認めてもらう、縦割りの形だった。GaNにおいては、いかに顧客にGaNを普及させるかが重要になる。どんな車やサーバを作りたいか、そのためにはロームはどんな製品を提供しなければならないかを、横並びのやり方で進める必要がある。つまりパートナー関係が非常に重要だと考えている」(山口氏)
PCIMで展示していたGaNデバイス搭載6.6kW OBCの試作品も、そうしたパートナー関係の重要性を示すものだ。
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